鳴くまで待つか、鳴かしてみようか

コミュニケーションの手順についてもう少し解説を続けます。

コミュニケーションにおいて重要なのは、相手がこちらの話を聞く気があるかどうか判断することです。

それがOKなら、次のステップとして相手に働きかけていくという手順になります。

そこで、リーダーは、まず相手が聞く耳があるかどうかを見ていきます。

そして、そうでない場合は、以下の二つの手段があります。

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1)相手が聞く耳をもつ状態まで待つ

2)相手が聞く耳をもつ状態をつくる

順序が逆になりますが、2)については、営業マンが顧客に耳寄りな話をもちかけるようなことです。

また、コミュニケーションスキルの面から言うと、「さわりだけを話し、あとはさっと中断する」といった手段が考えられます。

もちろん、常々言っていますように、相手の感受性に沿うような話し方にするのは当然です。

このあたりのテクニックについては、拙著「リーダー感覚」を参照してください。

L研リーダースクール関連サイトに「リーダー感覚」の紹介ページがあります。

1)については、リーダーはその時期の見極めと忍耐心が必要です。

この感じは、栄養を摂取するのと似ています。

どんなに高栄養価の食品でも、相手に必要ないものは受け付けられません。相手の消化吸収力が弱いときには、かえって害になります。

また、相手がこちらの話を理解できるためには、最低限、こちらが話しているベーシックな部分を共有している必要があります。

さもなければ、どんなによい内容でも、理解できません。

たとえば、拙著「先見力訓練法」は、読者の方の意見から判断して、若い人にはなかなか理解されにくいようです。

でも、30代半ばを過ぎて、いろいろ社会経験を積むと、「だんだん理解できるようになってきた」と言われます。

物事を理解するまでには、いろいろな前提条件があるものです。それが満たされるときこそ、機が満ちるというのでしょう。

メンバーが理解できるまでに時間がかかると判断したら、リーダーはそれまで忍耐強く待つ必要があります。

コミュニケーションの手順

朝三暮四(ちょうさんぼし)。これは列子(れっし)と荘子(そうじ)に載っている話です。

狙公(そこう)という大の猿好きがいて、猿をいっぱい飼っている人がいた。ちなみに狙というのは猿の意味です。

ところが数が多すぎて、しまいには家族の食糧まで猿にまわす始末。ついに、猿の飼料を制限せざるをえなくなった。

しかし、猿たちの機嫌を損ねてはいけないと考えた狙公は猿に相談します。

「おまえたちにやるドングリを、これから朝に三つ、夕方には四つにしたいのだがどうだろう」

すると、猿たちは歯をむき出しにして怒りだしました。

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朝三つばかりでは腹がすいてたまらないという猿の気持ちはよくわかる。狙公は智恵を働かせてこう言いました。

「それでは朝四つ、夕方は三つとしよう。これでどうだろう」

猿たちはみな喜んでうなずきました。

これについて、列子には「実質は同じであるのに、猿は朝三を怒り、朝四を喜んだ。知者が愚者をごまかしたり、聖人(国王のことでしょう)が人々をろうらくするのも、狙公が智恵を働かせて猿たちをたぶらかしたのと同じだ」とあります。

これをコミュニケーションスキルになぞらえると、説明の手順が大事だということになります。

もっとも、この話は荘子によると「高所から見れば実は同じことなのに、それを知らずに是非善悪にとらわれる者が、いたずらに心を労して偏見を生じるのだ」とあります。同じ話でも、随分受け止め方が違うものです。

原発を稼働しないと原子力の施設が負債となって、電力コストが上がり電力会社の経営がたいへんになるなどと電力会社は言っていますが、国全体で見れば、いずれにしろ費用は発生するわけで、税金でそれをまかなうか、電力料金としてまかなうかの違いだけです。

同じ費用がかかるなら、よりよい電力供給システムができるような仕組みをつくれる経費負担のあり方を考えるべきでしょう。

コミュニケーションを無視した戦略遂行は無理

久しぶりにチーム運営のコミュニケーションを取り上げます。

拙著『暗示型戦略』に詳しく書いてありますが、こういう時代にはこの概念が特に必要な気がします。

本の詳しい内容はホームページをお読みいただくとして、トップリーダーには、この本に書かれている原則をしっかり守って戦略を計画運営していただきたいわけです。

そのポイントは、まず希望を与えるということです。そして、その処方箋をプロセス、まあ工程表と呼んでもよいですが、そういうもので提示する。

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そして、最初の段階で小さくてもよいから100パーセントの成功を得ること。これがとても大事。

そうすると、メンバーはこれならいけるかもしれないと思って、そのプロセス全体をだんだん信用するようになります。これが確信をもたらす暗示効果なんです。

確信を持つと人間は行動力がましてきます。

とにかく暗示型戦略では、初期段階における徹底的な成功をかちえることが大事なので、テーマは慎重に選ばなくてはいけません。

あまり大がかりなテーマですと達成までに時間がかかるので、できれば小さなテーマの方がよい。そこで大事なのは小さくてもよいから100パーセントの成功をえることです。これが信頼を得ることになる。

さて、こういうリーダーの心理技術が特に必要になるのが現在の日本の政治状況のようです。

まず、政府が「原発について安全だ」と言っていますが、7割以上の国民が信じていません。それなのに、野田執行部は、原発を再稼働する構えです。

消費税増税についても、6割程度の国民が反対していますが、政府はこれを押し通そうとしています。

この二つは、いずれも工程表の誤りです。きちんとした手順をとっていないために、国民の信頼を得られていません。

党内手続きで勝手な手続きを理屈づけして強引にことを運んでも、党の外ではその理論は通用しないのです。

k3暗示型戦略の解説はこちら

安易な人間分類はリーダーにとって致命的

ある不動産業の人から聞いた話。職場でいつもやりあっている上司がいるのだそうです。

この人によると、一人は「性善説派」。もう一人は「性悪説派」。

性善説派――契約の相手方や仲介業者は基本的に当社の立場を理解し慮って行動してくれているはずだから、その行動や考えは信用できる、と考える。

性悪説派――契約の相手方や仲介業者は基本的に自社(または自分)の立場しか考えないで行動しているから、その行動や考えは信用できない、と考える。

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性善説派だと相手を信用しすぎて詰めが甘く、うまくいかない契約がここのところ何件かあります。いままでは『そんなことまで疑っていたら先に進まないでしょう』と言ったようなことでも、最近は突き詰めていかないと大きなリスクを追ってしまうことになりかねない例があるそうです。

たしかに、景気が悪い時代ですから、契約するときには以前よりも一層慎重でないといけないのでしょう。ですから、いまの時代は「性悪説派」が勢いがあるのかもしれませんね。

しかし、この話を聞いて、この分類方法は問題があるなと思いました。そもそも、その単語のなかに価値観が含まれてしまっています。この人は「性悪」の人のやり方が嫌いなのでしょう。

この人が、L研リーダースクールの受講生だったら、誤った人間分類を捨て、どんな行動基準の人かを見ないといけません。

性悪の人は、おそらく2種タイプでしょう。きちんと書類が揃っていないとダメなタイプです。性善の人は、ある意味おうような人。3種とか10種タイプなのではないかなと推測します。

もし私が会ってみたら、もっと確実に判断できます。

だいたいよいセールスマンは10種なのです。面倒見がいいというか、なんでも受け入れてくれる。

もしも、この二人のリーダーであれば、二人の特質を見ながら指導していかないといけません。好き嫌いを言っていたら仕方ありません。ですから、自分の価値観を含んだ人間分類法はあまりよくないと私は思っています。基本的な考え方は、こちらにあります。

 

リーダーの人間行動学の立読みはこちらから

相手が理解できるような話し方をする

昨日は、ほめる実践をつづけることが、リーダーシップをつける具体的な訓練になることを強調しました。

しかし、せっかく練習するなら、効果的に行いたいものです。そこで、大事になるのが「適切な語りかけの言葉を知る」ということです。

言い替えれば、「相手が理解できるような話し方をする」ということです。

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たとえば、自分がある仕事をやってもらいたいと思い、それを伝えようとします。

このとき、結論から先に言い、また、要点だけポンポンかいつまんで言うと、よくわかる人がいます。これは5種的傾向の強い人です。

初めから順序たてて順番に話をしていかないと、なかなか頭に入らない人もおります。上下型の人はそうでしょう。

そういうことには全然関係なく、ただリーダーのあなたが好きだから、言われたらなんでも喜んでやってくれる人もいます。これは左右型。

言っても全然頭に入らない人もいます。でも、「あいつはやってるぞ、お前にはできないのか」とけしかけると、「何を!」と勢いでやる人もいます。これは捻れ型。

このような感受性を学ぶと便利ですが、あえてそれを学ばなくても、日ごろから相手をよく観察していれば、どういうスタイルというかパターンがいいか、およその見当はつくはずです。

そのパターンを抽出するのが、観察の大事な役割でもあるのです。それで、私は人間行動分析とか、歴史上の人物を分析しながら、その重要性をみなさまに唱えつづけているわけです。

これは部下だけでなく、上司とコミュニケーションをはかるときにも知っていなければならない技術です。説得の技術と深くかかわってきます。

基本的な考え方は、こちらにあります。

 

リーダーの人間行動学の立読みはこちらから

部下との信頼関係をつくるには

上司が部下と信頼関係をつくるにはどうしたらよいか?

答えは簡単で、部下が望んでいる物を与えられる、ということでしょう。

たとえば、将軍が兵隊から信頼されるのは、彼が「勝てる将軍」だからです。戦ベタの将軍につく兵隊ほど気の毒なものはありませんからね。

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では、ビジネスリーダーはどうでしょうか。

私の考えでは、部下の成長になんとか寄与したいと思うこと――これがリーダーの条件であり、部下との信頼関係をつくる基本だと思います。

けれども、そういうことは忘れてもいいのです。そんなことばかり考えていたら、気が重くなるばかりです。そんな頭でっかちにならなくてもいい。

それより、ひたすら「相手をほめる」という実践を続ければいいのです。実践を続けていくと、相手に関心をもつとはどういうことか、人を育てるとはどういうことか、また、その喜びもおのずとわかってきます。

状況に応じてどう対応すべきかも、だんだんわかってきます。そうなれば、自然にリーダーとしての心構えもできてくるものです。

せっかくリーダーシップのセミナーなどに参加して学んでも、仕事に戻ると、いつのまにか忘れてしまう、という話をよく聞きます。

学んだことが役に立たない、身につかないのはもったいないですね。それには、とにかく「ほめること」を実践していけばいいと思いますよ。これで確実にリーダー感覚がついてきます。

 

リーダー感覚「リーダー感覚の解説はこちら」

リーダーは人間観察とほめる実践をひたすら続けよ

昨日は、人間には「示したい欲求」と「頼りたい(庇われたい)欲求」の2種類があることを説明しました。

なぜ人は示したいのか。それは自分の能力に自信がないから示したいのでしょう。頼りたい欲求もやはり自信がないから起きます。頼りたい方が素直だともいえますが。

さて、そこで、リーダーは部下のその欲求を処理することが仕事になります。具体的には、相手のいいところを認めること、つまり、ほめることがいいでしょう。これはどちらの欲求にも対応できます。

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ほめることはやさしそうに見えますが、いつも注意深く相手を観察していなければできないことです。

新入社員を2年生がうまく教えていたら、「さすが先輩だ、よく教えてくれているね」とほめる。でも、日ごろから注意して見ていないと、そういう場面は見過ごしてしまうでしょう。

それから、ほめ言葉がすぐ口に出るように習慣づけること。身につけないと、いざというとき、とっさにうまい言葉が出てきません。

言い方は、「それはいい、君はよくやっている、すごいな」と直接的にほめるか、「君のその行為のおかげで私や人が助かっている、私は感謝している」と間接的にほめる言い方のどちらかを選べばいいでしょう。これはケース・バイ・ケース。

「相手に関心をもって常に観察する」→「すぐほめる」――とにかくこれは反射的にできるようにならなければなりません。ほめる癖をつけることです。習慣化することですね。

こうやっていくと、ほめる技術がだんだん向上していきます。単に「うまくやったね」と言っているレベルから、部下の能力を引き出し、部下を成長させるほめ言葉が出てくるようになります。

たとえば、これも前に書きましたが、「君のそこはすぐれている。そして、ここを改善すればもっと良くなるんだがな」といった言い方ですね。

しかし、これを初心のリーダーが、部下との信頼関係もなくやると、かえって害になることがあるかもしれません。そこはあまり背伸びをしないで、じっくりとりくんでください。

それから、ほめるタイミングというものがあるのも、だんだんわかってきます。いつでもほめればいいというのではないのです。

とにかく、背伸びをしないで、自分のレベルに合ったほめ方で、少しずつレベルアップをしていくようにすることです。そのためには、実践です。実践を通じて、人に対する観察力やほめる技術を身に着け、そのレベルを上げていく。

 

リーダー感覚の画像『リーダー感覚』

リーダーになって最も苦労する人とは?

リーダーになって苦労している人というのは、部下に対して関心をもてない人なのではないでしょうか。

「いや、俺は部下に関心をもって一生懸命意見を聞いている」と言う人もいますが、よく調べると、意見を聞くのが1で、それについて自分の意見を押し付けるのが10だったりします。そういうケースが多いような気がします。

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たとえば営業課長になったら、自分でビッグな顧客を営業することももちろんありますが、同時に部下の営業マンを育てていかなければなりません。

営業技術を教えなければならないし、そもそもそれが受け入れられる信頼関係を営業マンとの間で築かなければならない。自信を失った部下は慰めなければならない。あるいは、天狗になっている営業マンは叱ることが必要かもしれません。

そういうとき邪魔なのが、「自分を示したい」とか「認めてもらいたい」という欲求です。

前者は、自分はえらいぞと、威張って見せたい欲求です。また、後者は、人に頼りたい、かばってほしいという欲求です。これを「注視欲求」と私は呼ぶことがあります。これらは非常に強い人間の欲求です。これが邪魔するのです。

リーダーとは、自分の欲求を抑えて、相手の欲求を認めてあげるのが仕事のようなものなのです。自分の欲求にふりまわされていては、仕事ができません。そういうふうに発想を転換しなければならないのに、案外それができない人が多いのかもしれません。

リーダー感覚の画像『リーダー感覚』

私が人をほめたとき2

前回の「私が人をほめたとき」はこちら

この先生の反応は、私にとって非常に興味深かった。

私は「べージュで統一している」という事実は指摘しているが、「高そうなスーツですね」というような服装に関する評価は何一つ言っていないのである。

にもかかわらず、相手は喜んでいる。

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今思うに、私の言葉は、この先生のスーツをほめているのではなく、先生の着こなしのセンスの良さを認めたことになるらしい。

たしかに「いい洋服ですね」でが、着こなしがほめられたことにはならない。

考えてみれば、たいていの人は自分の持ち物をほめられるより、それを所有する能力や、それをうまく活用している自分を認めてもらいたいものだ。

ところで、この先生は着こなしを高く評価されたと思い込み、手放しで喜んでいる。

どうして、そんなふうになってしまったのだろう。(つづく)

この内容は『リーダーの暗示学』にあります。

お問い合わせリーダーの暗示学の詳細はこちら

相手が聞く耳をもっているかどうかで対応を変える

今日はコミュニケーションというよりは、リーダーや教師の指導における課題というようにお考えください。

人間は基本的に人の話を聞くのはいやなものと考えるべきでしょう。

だから、人の話を聞くのは、その気になるときだけ。

相手がその気になって聞いているときだけが、リーダーの言葉が役に立つとき、ということでもありますね。

ですから、相手に聞く気があるかどうかをよく見て、何か言うということも大事です。

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相手が聞く気がないといっても、悪意ではない場合もあります。

そもそも、理解できない状態というのがあります。

たとえば、私の書いた『先見力訓練法』。

私自身はそんなに難しい内容が含まれているとは思っていないのですが、「難しい」とよく言われました。

しかし、そういう人もあとから、「ああ、そういうことだったのか」と分かってくれました。

その人に言わせると、私の本を理解するためのいろいろな前提が20代のころはまだ不足していて、30台半ばになってようやく理解できるようになった、ということです。

この本はいろいろな社会現象を含んでいるため、社会行動の基本的なとらえかたなどが問題だったのかも知れません。

ともかく、ある基本条件が準備されていないと、何か言ってもなかなか理解できないものです。

また、頭ではわかったつもりでも、それが使えるかとなると、また別問題です。

それが、ある体験によって、「ああ、先生の言っていたことはこういうことだったのか」と腑に落ちることがよくあります。

そうなった段階になって、ようやくその知識を使えるようになるわけです。

私自身もいまでもそういうことはよくあります。まあ、人によってはこれを「気づき」と呼ぶかもしれません。

以上のことをまとめますと、指導する側は相手が聞く耳にあるかどうかを見極める必要があります。

聞く耳があるなら、それに対して適切な指導なりコミュニケーションをとればよいわけです。これは感受性に応じてコミュニケーションをとるのがよいでしょう。

問題は、相手が聞く耳がない、あるいはまだ聞ける状態でない場合。こういうときどうするか。

いろいろなテクニックもあります。それについては拙著『リーダー感覚』に、「機、度、間を考える」というような項がありますので参考にしてください。

また、『リーダーの暗示学』の第7章には、おもしろい例を載せています。

たとえばコマーシャルの効果ということですが、私は高橋英樹さんの越後製菓のおもちのCMがいちばん効果的だと思っています。

なんのことはないコマーシャルです。ただ「正解!越後製菓」の連呼なんです。

しかし、単純なフレーズを繰り返していくと、いつのまにか潜在意識にしみ込んでいきます。この場合、単純なほどよい。

そのフレーズが、あるとき何かの体験と結びつくわけですね。

たとえば、スーパーに行って、たまたま越後製菓のもちを見たときとかですね。つまり、このフレーズは一種の伏線的な効果をもたらすわけです。

詳しい説明はここでは省きますが、世の中にはいろいろ参考になることがありますから、視野を広げて他分野の成功例などを研究することはとてもよいことです。