二つの指導法から考えるリーダー育成2

前回「二つの指導法から考えるリーダー育成1」のつづき

前回触れた宮大工の教育方針の特徴は、弟子が自ら創意工夫する態度を促すこと、そして教えすぎないことでした。とにかく自分で考えさせ、自分で努力させること。これがないと勘は育たない、技術は身につかない、ということのようです。プロを目指す人にはこういう指導法が有効でしょう。

では、現代のビジネスマンにはどういった教育がされているか。

西岡棟梁のような方法はまず採用できないでしょう。その代わり、やり方や答えを順序良くマニュアル化して教える方法が一般化しています。

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一見すると、知識の習得においては、このほうが効率がよいように見えます。

しかし、マニュアル教育ばかり受けていますと、自分で頭を使わないのですから、絶対バカになりますね。私がよく引用するジョークがあります。

あるファースト・フード店でハンバーガー三十人分を注文したら、「こちらでお召し上がりになりますか、それともお持ち帰りになりますか」と聞かれたとか。

こういうジョークが生まれる背景には、仕事に対する感動の欠如があるのではないかと思います。

マニュアルどおりやって問題がなければ、能力を発揮しようがないし、だいいち感動がありません。それではそこから先、伸びるはずがないでしょう。それがお店側の狙いなのですから、それはそれで構いませんが……。

企業では時間のかかるやり方はますます採用されにくくなっています。マニュアル教育が全盛となり、試行錯誤の時間は極力減らすように求められています。

上司も上司で、結果がすぐほしいので、「そんなくだらないことを考えていないで、俺の言うとおりにさっさとやれ」と怒鳴るばかりです。

本当は〝急がばまわれ〟なのに、それが現代社会の要請ですから、仕方ないといえば仕方ないのかもしれません。

しかし、バカになりたくないと思うビジネスマンなら、そこは自分で自己啓発するしかないでしょう。自分で必要な内容を自分でみつけてきて、自分で吸収することです。

引用:佐藤直曉著『リーダー感覚』)解説と立読み

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二つの指導法から考えるリーダー育成1

宮大工の教育法はちょっと変わっています。

教育方針で特徴的なのは、弟子が自ら創意工夫する態度を促すこと、そして教えすぎないことでした。

西岡棟梁はわかりやすく教えるようなことは、決してしない人でした。弟子の様子を見ながら、遠回しに弟子の考えや創造力がわくようなことをポツンと言うだけなのです。そのときはわからないけれど、あとで「ああ、そういうことだったのか」とわかる教え方をしていました。

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小川三夫氏が弟子入りした直後のこと。棟梁は彼の道具をちょっと見て、ポンと捨ててしまいました。道具を見れば、どれだけの腕なのか、すぐわかるからです。そのあと、棟梁は「納屋を掃除しておき」とだけ言いました。

そこで、小川氏が納屋にいってみると、そこには棟梁の道具が置いてあり、鉋屑(かんなくず)がそばに残っていました。棟梁は、「ちゃんと研いである鉋と、その鉋で削った鉋屑があるから、掃除しながらそれをよく見ろ。そうすれば、おまえの鉋があかんという意味がわかるはずだ」と言いたかったのです。

西岡棟梁のこういった指導法は随所に見られました。たとえば、鉋のかけ方を棟梁が弟子に教えるときは、「こうやるんだ」と一度見せるだけです。向こうが透けて見えるほどの薄い鉋屑が出てきますが、あとはそれを渡すだけで、ヒントは一切なし。弟子は鉋屑を見ながら、同じものができるまでひたすら研究するしかありません。

ですから、弟子が「これはどうやるのですか」と質問しても、簡単に答えてくれません。西岡棟梁は「君はどう思うのや」と必ず聞きかえします。これでは弟子はうかつに質問できません。自分の意見が準備ができていないと、怖くて質問できないわけです。

なぜこういう指導方法を西岡棟梁が採用するかといえば、自分で考え、自分の体で覚えるしか、仕事は身につかないと知っているからです。木は生き物ですから、ひとつひとつ違う。でも、いつでも親方がそばにはいられません。弟子は、その場その場で、勘で処理できるようにならなけらばなりません。そのためには――

「弟子になろうという者は、大工になろうという気は初めからある。しかし、教えてもらおうという気持ちを捨てるようにならないと、ものは伝わらない(21)」

もっとも、西岡棟梁の真意がわかるまでは、小川さんもずいぶん意地悪な師匠だと思っていたそうです。

引用:佐藤直曉著『リーダー感覚』)解説と立読み

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明日は、これと対極にある教育法をご紹介しましょう。

新人看護師への指導に見るコミュニケーションスキル

ある病院での新人教育に関するアンケート結果の一部を紹介しましょう。

新人のモチベーションが上がる時

・先輩からの声かけがあったとき「私は大切にされている」と実感し嬉しかった

・自宅での学習や事前学習をしていることに気づいて声をかけてくれたとき

・病棟外でも声をかけてもらったとき

・先輩、上司から「よく見ることができているね」と言われたとき

・「すごいね、そこまで考えているんだね」と言われたとき

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新人のモチベーションが下がる時

・忙しそうで声をかけられず、不安なままでケアをしているとき、

・今、しようとしたことを「やっていない、できていない」と言われたとき

・できていないことしか言ってもらえない、それを人前で言われるとき

引用:『主任&中堅+こころサポート』2012年1・2月号(日総研)16-17ページ。

常々、私が言っていることそのまんまだな、という印象です。

新人には、ほめることから入るのがよい。新人は、だいたい不安状態にありますので、まずよいところを積極的にほめてやる気を高めることがよいのです。

逆に叱るのは非常にめげさせよい効果をもたらしません。

たとえば上の例の「できていないことしか言ってもらえない、それを人前で言われるとき」など、リーダー教育の欠如を示しています。

問題点を注意するときでも、まずほめて、そのあと「ここを直せばもっとよくなるよ」という言い方をしないといけません。

そもそも注意をするのは、仕事の仕方を直してもらうのが目的であり、新人をめげさせるのが目的ではないのですから、そこのところを徹底的にリーダー教育しないといけないと思いますね。

L研リーダースクールの初等人間行動学科ではこのあたりを徹底的に教育します。

看護リーダー科はこちら

指導の常識が破れるとき

たとえば、世間では、人と比較するのはよくないとされています。

しかし、人と比較しないと力が出ない人がおります。

問題は、このような人はライバルを憎むようになることです。

そこで、このタイプには、歴史上の偉人と張り合うようにさせる。

「松下幸之助はもっと苦労してがんばったぞ」などと言うと、本気で努力します。

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コミュニケーション力をつける訓練の順序

リーダーがコミュニケーション能力をつける手順としては、こんなコースが考えられます。

まず、ほめる技術をある程度使えるようにする。これは比較的即効性があって、初心者のやる気を興味を維持しやすいからです。

この訓練は非常にいろいろな場面で応用がききます。

人間関係の改善にはとても役立ちます。

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また、叱るときにすら、これを組み合わせると、反発を緩和して、こちらの注文が相手にすんなり入りやすくなります。

ですから、まずはここからスタートするのが、とても効率がよいのです。

それが、できたら、次は認める技術を使えるようにする。

これは、相手が気がついていないよい点を指摘するとこで、相手にそれを意識させる。すると、その方面に能力が伸びていきます。

部下を成長させるためには、とても有益な技術です。

単に部下だけでなく、顧客に使っても良いし、生徒に使っても良い。いや、上司に使っても良い。非常に感謝されますので、人間関係の改善にも役に立ちます。営業マンなどは顧客にどんどんこれを使うといいでしょう。

ブログ仲間のある清掃会社の社長さんは、お客さんの医院に対して、これを使っているようです。

「(自分の仕事を通して)医院の理念がわかる」とブログによく書いておられますが、そういうことを院長に言うもよし、いや、ブログで書けば、それを読んだ院長さんがどう反応するか。

これも間接的なほめる技術であり、立派なほめる技術です。

感受性に基づいて相手のやる気を引き出す

暗示といってもそれほど難しいことではありません。要は、相手にこちらの狙いどおりの空想を与えること。

空想が生まれると、それに沿って人間行動が起きるので、暗示はリーダーにとってとても重要なコミュニケーション技術となります。

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以下は拙著「リーダーの暗示学」よりもってきました。

レポートの提出期限が迫っているのに、少しも筆が進まず悩んでいる人がいた。その人が私に「どうしよう」と、相談するともなく話しかけてきた。

私はとっさにこう答えた。

「君は学生時代、試験の目前になると、徹夜、徹夜の連続で、いつも切り抜けてきたではないか。しかも、準備していないわりに、成績は優秀だった。君はあまり準備してやるタイプではない。要領よくサッと瞬発力でやるタイプなのだから、きっと今度も大丈夫だよ」

これは、本人が自分の性格や行動パターンを自認している場合の言葉かけであり、暗示なのである。

つまり、相手に、自分の性格どおりにやればうまくいくと示唆する暗示である。

実は、この人は利害損得・合理性に敏感に反応するタイプ(前後型5種のこと)であった。そこで私は、今の状況が、その人の感受性にぴったりかなっていると指摘したのである。

この場合、相手も自分の感受性傾向を知っていたから、私の暗示は無理のないものと受け止められたのである。

とにかく、こういう人は期限ギリギリにならないとやる気にならないのだから、良くも悪くもこう言うしかないと私は思ったのである。ただ、私はそれだけでは少し心配だったので、そのあとこうつけ加えた。

「書けなくともいいから、一日五分でいいから、とにかく机に座って、なんでもいいから思いついたことを書いてみろ」

これは、小さな行動をとらせながら、だんだん本気にさせていく暗示である。これについては、あとの項で説明する。

その人が私の言うとおりやったかどうかは疑わしいが、目に輝きが現れていたから、少なくとも元気はわいたはずだ。

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このように感受性を利用しながら相手にアドバイスをすることは、とても効果があります。

このケースで私がやったことは、要するに「まあ、がんばりなさい」と言っただけです。勇気が出ればあとは本人ががんばるでしょう。こちらができるのはそこまでです。そこから先は本人次第。

コミュニケーションと感応現象

gooのコミュニケーション能力が高い人の会話の特徴ランキングによると、

1位:話の腰を折らず、最後まで聞いてから自分の意見を伝える

2位:常に自然な笑顔をキープしている

3位:一方的にしゃべらず、相手からも会話を引き出す努力を怠らない

だそうですよ。

1位と3位は、要するに人の話をよく聞ける人、ということでしょう。

ワンマン社長さんには、頭のいたい話でしょう。

しかし、……====おもしろいもので、この人たちは自分では人の話を聞いているつもりなのです。

だから、ビデオで自分の姿を撮っておき、あとで見ると愕然とする。

そんなNHKの番組を見たことがありますよ。

みんな常識としてはもっているわけです。人の話を聞くのはよいことであり、自分でもそう努めていると。でもできていないのです。

できないものを追いかけるのもつらいでしょう。相当忍耐心がいります。

できる人はおやりになればいい。できない人は無理するなということ。

2位の常に自然な笑顔をキープするだって、当たり前のことであり、誰だってそうしたいと思う。

営業マンなんかは特にそうでしょう。

よく営業マンが言うのが、のっているときは不思議と注文がとれる。逆に、スランプで気が滅入っているときは、いくら頑張っても仕事がとれない。

笑顔になっていないから、というのもまんざら間違いではない。結果的にはですね。

しかし、意識して努力して笑顔をつくっても、少し時間がたつと結局元の木阿弥。日ごろの心が反映する顔になってしまう。無意識の状態では、なかなか笑顔にはなりません。

ですから、笑顔をキープしようなどと考えても仕方ないことです。

それよりも、いつも楽しい気分で生活しようと決意した方が効果はあります。

会議のときでも、楽しい気分で会議をしようと思っている方が、人の話を聞いてよいコミュニケーションをとろうなどといったむなしい努力をするりもよい効果があるでしょう。

これを分析すると、たぶん感応現象ということだと思います。

感応現象とは、「朱に交われば赤くなる」とか「勇将の下に弱卒無し」の類ですね。

リーダーは、感応現象を使いこなすことをコミュニケーションの原点として考えてみてください。

社内での人付き合いの難しさ

gooの「こんな上司にはついていけない!」と思う上司ランキングによると、

1位:部下の評価に自分の「好き嫌い」が入る

2位:自分の間違いを認めない

3位:部下が失敗したとき責任をとらない

4位:気分屋

5位:人の話を聞かない

誰しも相性というのがありますから、どうしても好き嫌いが入るのは仕方ないのかもしれません。

感受性を学ぶと、こういう問題はかなり軽減されるのではないかと思います。====

大雑把にいうと、人間には10種類の感受性があります。

これは人間を学ぶにはとてもよいものです。

いろいろなことがありますが、こんな例もあります。

ある人がこんな質問を野口晴哉先生(感受性についてまとめた方。整体協会創始者)にしました。

「うちの子供はバイオリンの稽古がどうも熱心でない。そこで、バイオリン学校にバイオリンをもたせず通わせたら、稽古熱心になるのではないか。どんなものだろう」

変わったことを言う親ですが、それに対する野口先生の答えです。

「9種の子供なら、親を恨むだろう」

9種は執念深いので、恨まれたら一生恨まれます。気をつけないといけません。

ちなみに、人間のタイプを1種から10種まで分類しています。顔の形、体形、運動特性、姿勢、性格、かかりやすい病気、好きな相手(相性)などがタイプ別にまとめられています。

「前後型5種や捻れ型7種、8種の子供なら、クラスが稽古できないように暴れるだろう」

まあ、学級崩壊のようなことをするというわけです。両タイプとも行動的なタイプですので、暴れて手がつけられなくなるかも知れません。

「上下型1種、2種の子供だけが、唯一、自分が参加していなくても、人が演奏しているのを楽しんで聞くことができる」

L研リーダースクールの通信講座では、初等科でコミュニケーションスキルとともに、感受性をお教えしています。

感受性分析についてはこちらも参考にしてください

ぜひ勉強して下さい。そうすれば、上司に少なくとも目の敵にされることはなくなるはずです。

その逆に、使いにくい部下の苦労も、少しずつ解消できるでしょう。

「仕方ない奴だ」と腹の中で笑ってすますぐらいにはなれます。精神衛生上、とてもよろしい。

対立に固執しないコミュニケーション戦略

対立が生じると、ついそれにとらわれてしまう悪い癖を我々はもっています。

対立に夢中になって、障害を取り除くことばかりに気をとられていると、どうしても視野が狭まってしまう。もっと視野を広げれば簡単に物事を処理できるのに、それに気づけなくなります。

次の会話を考えていただきましょう。

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私が人をほめたとき3

前回の「私が人をほめたとき2」はこちら

この先生の反応は、私にとって非常に興味深かった。

私は「べージュで統一している」という事実は指摘しているが、「高そうなスーツですね」というような服装に関する評価は何一つ言っていないのである。

にもかかわらず、相手は喜んでいる。

さて、今日は相手の反応を導きやすい言葉について考察してみよう。

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