気づきの感覚を高めるためには

リーダーとして大事なのは、「おや!」と思う感覚ではないでしょうか。言い替えれば「気づく」能力とでもいいましょうか。

たとえば、営業であれば、予想外に儲かっている事業を見て気づくということでしょう。

コミュニケーションであれば、相手と話をしていて、「なんかいつもと違う感じだな」とか「いつもと違う顔つきだな」といった類のことです。

銀行員なら、お札を触っていて、「おや、これは偽札か?」と感じることです。

これらの場合は、いずれも「正常」とか「通常」というベースのものがあって、そこからの乖離が問題になるわけです。

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人間行動でも、「このリーダー、ぶれてるな」とか言われることがありますね。これも気づきです。いつもと違う行動をリーダーがとると、そう思われるわけです。

拙著『リーダーの人間行動学』では、異常行動というかたちで人間行動を分析しています。

もちろん、これは精神がおかしくなったという意味ではありません。いつものその人とは思えない行動のことです。「らしくない行動」のことです。そして、そのベースはその人の感受性です。

ところが、私が研究したところ、この「らしくない行動」というのも、実はその人らしい行動なのです。では、なぜ「らしくない」行動に見えるのか。

それは、いろいろな環境条件があって、そのために我々にはその人らしく見えないのです。

そこで感受性分析をしながら環境を分析していきますと、やっぱりその人らしい行動だったんだ、と理解できてきます。

そう思えると、人間の理解が一歩進むんですね。

そのあたりを、私なりに『リーダーの人間行動学』で歴史上の人物を通して考察していますので、よろしかったらお読みください。

たとえば「空海と最澄」のケース、これは内容は少々固いのですが、私としてはかなりの自信作です。

二人は宗教界の巨人で、宗教的な見解の相違で仲違いしたと、一般には思われています。

ところが、私が人間分析をすると、そんな理屈の上での問題と言うよりも、実は人間くさい意見の相違に思えてくるのです。

空海の行動はこのとき異常だったと、司馬遼太郞さんは言っていますが、感受性分析をして考えると、実は空海らしい行動だとわかってきます。

褒める技術にまさるものなし

二、三年前の日経新聞に「なぜか褒めあい族」という記事が出ていました。

「最近はただ褒めあう大人が増えている」という、やや批判的な記事でしたね。

ですので、これについての意見を述べてみましょう。

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その前に、記事の概要です。

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伊勢丹浦和店では、「褒めあいカード」なるものがあって、月1枚は同僚の良さをカードにしたため贈り合う。それを「褒め愛ボード」に貼り付ける。

「荷物を床に置こうとしたお客様に、すぐいすを用意。素晴らしいです」

こんな内容のほめ言葉をかけあうらしい。社員には「褒められるとモチベーションが高まる」と好評だそうだ。

就職活動をひかえた学生向けのセミナー会社では、参加者同士でおたがいの長所を褒めあうことをする。

別のセミナー会社代表は「特に若者に自信がもてない人が目立つ。褒めないと勇気がもてず、就職活動や会社を辞めてしまう人が多い」と言う。

焼き鳥チェーンのオーナーは、「若者は注意するより褒めた方が『自分の仕事を見ている』と実感し、がんばれるようだ」と言う。

だが、と日経記事はここからつづける。やりすぎのようなこともあるというのだ。

パソコンに名前や性、年齢などを入力すると、画面を閉じるまでほめ言葉が現れ続けるサイトがある。最近は1日15万件のアクセスを越えることも。もっとも、入力した人は「救われた」と感想を寄せる。

一部では、褒めすぎが反骨心などの喪失につながると、懸念する声もある。

なぜそうまでして褒められたいか。白梅学園大学の汐見学長は「自分に自信のない人を褒めても効果は一時的。企業などはやみくもに褒めるより、本人が自信をもてるように育てることが大事では」と。

「いざこざを避けるために、安易に褒めている面があるのでは」という人もいる。

安易なほめ言葉に慣れた人は、もはや叱れないのではないか、という不安を感じる向きもある。

セミナー会社の代表は「実は不景気になってから、管理職にしかり方を教える研修の以来も増えている」といっている。

記事は最後にこうまとめている。

「ほめ言葉で元気になるのはよいけれど、そのうちしっぺ返しがくる?」

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長くなりましたが、要するに、日経記事は安易に褒めるのはどうか、といいたいようです。

まず、画面に入力するとひたすらほめ言葉が出てくるサイトですが、これは遊びのような物でしょうから、目くじら立てるほどのこともないと思いますけれどね。

それだけ、褒めてほしいと思う人が多い、褒めて育ててくれる人が少ないという証拠であると思います。

「企業などはやみくもに褒めるより、本人が自信をもてるように育てることが大事では」という意見がありましたが、そんなら叱って育てるのか、と反論したくなります。

やはり褒めて育てるしかないのです。そうでないと、多くの人は潰れます。

「本人が自信をもてるように、ほめて育てることが大事だ」というのが私の意見です。

もちろん、やみくもに褒めるのはリーダーとして失格です。私に言わせれば褒める技術を学んでいないリーダーだからそうなるのです。

褒める技術の基本は、「相手の琴線に触れる言葉で褒める」ということです。

なんでも褒めればいいというものではないのです。相手の心に100パーセントピタッとくる言葉が必要なのです。

しかし、最初からそういうことができない人も多いから、とにかくなんでもいいから最初は褒めなさい、と私は指導します。

それから、褒めすぎが反骨心の喪失につながらないかという意見があるようです。褒めすぎは甘やかしに通じると言いたいのかもしれませんね。

褒めるべきか叱るべきか、どちらがよいかという質問は、人間を見極める力がない人が短絡的に結論を出したいのだろうと、私は思っています。

人間には褒めないとダメな人と、叱らないとダメなタイプとがある。それを見分けることがリーダーの能力です。

叱って伸びる人は相当の自信家です。反骨精神がある。こういう人は自信過剰になる傾向があるので、時々天狗の鼻をへし折らないといけない。へし折ってもまだついてくるように指導しないといけませんけどね。出て行ってしまうようでは、指導失敗ということですから。

ただ、そういう人は全体の1割もいないでしょう。だから、叱るのは確率的にいって難しいと思っています。ほとんどの人は褒めたほうが効果があります。

この記事を書いた記者は、多分反骨精神のおうせいなタイプなのでしょう。それで、褒められたい人間が大勢いることが、よく理解できないのではないでしょうか。

叱ってよいタイプとそうでないタイプの見分けができない人がリーダーだったら、まず褒めることから入りなさいと、私は勧めます。だんだん人を見る眼を養って、いろんな人に対処できるリーダーになってもらいたいと思います。

不景気になって叱り方を教えてほしいという需要が増えているそうですが、管理職が短絡的な手段に走っているとしか思えませんね。

むしろ、こういうときこそ褒め方をもっと勉強べきだ、と私は思いますね。そして、みんなにやる気をもって働いてもらわないといけない。

褒めるのは簡単だとみんな思っている。そこがあさはかなところですね。

褒めるのは、入り口は簡単そうに見えますが、本気で人間を育てようと思ったら、褒める勉強をもっと真剣にしないといけないはずです。

それから、最後の「褒め言葉に酔い続けていると、そのうちしっぺ返しがくる?」という文ですが、たいていの人はそれほどお人好しではないので、大丈夫だと思います。

しかし、そういう人がいないわけではない。内容に関係なく、ただ褒められるだけで嬉しくなってしまうのです。人がよすぎるともいえますね。こういうタイプも少しですがおります。

リーダーに人間を見分ける力があれば、そこはうまく指導できるはずです。

しかし、褒められるとすぐ有頂天になる人たちも自分自身で時々は反省すべきですね。しかし、性格は直らないでしょうねえ。麻生さんみたいな人のことですよ。

リーダーはそういう人たちに高い理想をもたせないといけません。神様と比べれば人間なんてどんなに頑張ってもたいしたことはない。そう思える人間は謙虚です。

リーダーは、そう思えるような高い目標、理想を部下に与えて、それを求めていくような謙虚な人間を育てないといけないと、私は思います。

 

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■リーダーシップ向上に関する参考書籍

佐藤直曉著『リーダー感覚――人を指導する喜び』(鳥影社)

本書はL研リーダースクールの通信講座初等科Ⅰのメインテキストです。初等科Ⅰでは、人の心を動かす訓練としてほめる訓練を実践していただきます。この講座は、受講生に技術的アドバイスを行うとともに、受講生の成長を見守っていく実践型プログラムです。

立読みはこちらからどうぞ

感受性分析は人間関係をよくする最後の知識

人間には相性というものがあり、なかなかしっくりいかない人、あった瞬間に通じ合える人、というのがあるのは事実です。

リーダーとサブリーダー、リーダーと部下、教師と生徒、どんなケースでも相性が影響を与えます。

相性の悪い人に対応する場合は、まず相手の行動基準を把握することに努めるべきです。

相手が「こういう人なのだ」とわかれば、腹の虫もおさまりやすいでしょう。また、対策もたてやすくなります。

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たとえば、信長はたいへん猜疑心の強い人でした。あるとき信長の命令に秀吉は違反した。

このとき、秀吉配下の蜂須賀小六あたりは、恐怖にとらわれたそうです。

秀吉は、城の門をあけて、どんちゃん騒ぎをしたそうです。下手に門を固く閉じて謹慎の姿勢でも示そうものなら、戦う準備をしていると疑われてしまいます。

秀吉の人間察知力は相当なものだったのでしょう。なにしろ、信長の下で生き延びたわけですから。

一方、相性がよいというのも、実はケースバイケースということがよくあります。

たとえば、家族のように密接につきあうのはどうもいやだが、仕事ではお互いがカバーできると認めている。だから、あえて距離をとり、仕事の仲間として付き合うということもありえます。

というより、実際はこういう例の方が多いかもしれませんね。

よい人間関係とは、密着した関係でなければいけないように思う人がいるかもしれませんが、適当に距離を置いた方がよい関係があることも知らないといけません。

この場合も、行動基準を把握すれば、どのような関係がベターかが理解しやすくなります。

人間の行動基準とは究極的にはその人の価値観そのものでもあるわけです。したがって、我々はそれを素早く的確につかむ訓練をすればよいことになります。

これに関してはすでによい理論があるので、これを勉強していけばかなりのレベルまで達します。

簡単に言えば、人間の行動基準は10種類です。 そのなかのいくつかを紹介しましょう。

 
・理論とか理屈が好きで、名誉に敏感なタイプ
・好き嫌いの感情で行動するタイプ
・利害とか損得勘定で行動するタイプ
・勝つか負けるかで行動するタイプ
・愛の感情で行動するタイプ

相手がどのタイプかわかるようになると、営業でも対人折衝でも、とにかく非常に楽になります。 といっても、これはかなり奥が深いものです。それぞれについて、細かい行動分析、体形、かかりやすい病気などが知られています。

勉強する価値はおおいにあります。

ここをお読みください。 私の言っていることのイメージが多少つかめると思います。

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■人間分析に関する参考書籍

佐藤直曉著『リーダーの人間行動学』は、人間の行動基準パターンとその理論を簡単に紹介しながら、応用として、歴史上の人物の行動分析を行っています。歴史上の人物には極めて強い個性をもっている人が多く、そのため特徴がはっきりでやすく、人間分析が比較的容易です。したがって、勉強材料としてとてもよいのです。

扱っている人物は、南極探検家スコット、乃木希典、空海と最澄、ショパンとジョルジュサンドです。 いずれも、極めてユニークな個性の持ち主ですので、特徴がわかりやすく、理解しやすくなっています。

各人物には、それぞれ質問を用意してありますので、読者はそれを考えれば、一層人間分析の意味が理解できるでしょう。

リーダーの人間分析講座,コミュニケーション力をつける-リーダーの人間行動学

立読み

認める技術に必要な人間を見るセンス

認める技術とほめる技術は一見似通っています。

というのも、両方ともほめることを通じて人の心を動かそうとしているからです。

では違いはと言うと、ほめる対象が異なるのです。

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ほめる技術は、相手がよいことをしたらほめます。あるいは、よい才能があればそれをほめます。

それは誰の目にも明かな事実に基づいて行われます。

一方、認める技術とは、まだ相手が気がついていない相手の長所やメリットを相手に認識させることです。

ですから、相手にとっては少々意外性を伴うことが多いでしょう。

しかし、それは相手の自尊心を満足させ、それを受け入れると、相手はその方向に成長していきます。

もちろん、どんなことでもいいわけではありません。

「君は頭脳優秀で天才的だ」
「君は健康万全だ」

などと言っても、まず信じないでしょう。

そんなことはふつうの人間にはありえないからです。

嘘を言う必要はありません。大げさなことである必要もないのです。

従来の相手の考え方に少し角度を変えて提示すればよいのです。

たとえば、仕事のスピードが遅い人に対して

「慎重な仕事ぶりがよい」と言えば、相手は慎重さを一層増すでしょう。

問題は、実際に何を認めるかです。

それは、日ごろからの観察によって、相手のよいところを見抜くという、いわば人間を見るセンスが必要になってくるのです。

相手の立場で考えるさいの盲点

相手の立場に立って考えよ、というのはよく聞かれる言葉です。

それに関連してですが、「役割交換法」というものがあるそうです。

異なる意見を主張する2人が、立場を交換して発言するという手法です。

こんな感じでやるのだそうです。

上司のAさんは部下のBさんに資料を集めてもらおうと思いました。そこで、Aさんは「よさそうな資料を集めてくれ」とBさんに命じました。

しかし、その指示にBさんは納得できません。

「どうしていつも曖昧な依頼しかしないんだ」と腹を立てる。

こんなときに「相手と立場を交換し、意見を主張してみる」という試み。これが役割交換法です。私はこの方法をあまり信用していませんが、こんな感じでやるのだそうです。

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たとえば、AさんはBさんの立場で、「Aさんが具体的な指示を出してくれないから、どんな資料を探してくればいいか分からない」と、Bさんの言いたいことを言います。

一方、BさんはAさんの立場で、

「おおまかに資料を集めてくれれば、その中から必要な資料を考えられるかもしれない」

と、Aさんの考えが理解できてきます。

こんなことを繰り返していくと、お互いのことがだんだん理解できてくるというのです。

やがて、Aさんも

「良さそうと思える基準がまったくない状態では、資料を集めようと思っても何から手をつけてよいか分からないだろう」とBさんの問題に気づくかもしれないというのです。

なるほど、そういうふうに心理カウンセラーさんは考えるんですねえ。

しかしですねえ、こんなことを現実の社会でやりますか?

意見対立をしてカッカしている人たちが役割交換法をするなんて、私にはとても思えませんが。

部下はやってもいいと思うかもしれませんが、上司は絶対拒絶するでしょう。

あるいは、いまの役割交換法を1人2役でやる方法もあるそうです。これを行うと、上司の立場や部下の立場が理解できるそうです。

まあ、こちらの方が上の方法よりいくらかは現実的でしょう。

しかし、相手の立場に立つだけでは問題は解決しないだろうと私は考えております。

そもそもこの問題には二つの問題が隠されています。

ひとつは、Aがリーダーとしての資格がないことです。問題を把握できず、部下に的確な指示ができない可能性がありますね。もしそうなら、こういうリーダーは、辞めてもらった方がいい。

もうひとつの可能性は、上司が自分の行動基準を部下に押しつけてしまう癖です。

いくら相手の立場に立っても、自分の価値観、自分の感受性、自分の行動基準で立っていたら、相手の行動が理解できるはずなんかないんです。

上の例でいえば、Aは性格的に大ざっぱなところがあるかもしれない。あるいは、あまり頭で考えずに体が先に動くタイプかもしれません。

一方、Bは几帳面なタイプで、言われたことはそつなくこなすが、言われないことには行動できない融通のきかないタイプかもしれません。

そういう人間分析をきちんとしたうえで、AはBに指示を出すべきなんです。

自分と同じ行動基準で動くはずという錯覚を人はよくやるんです。これが立場分析の危ういところです。

私ならBにこう言うかもしれません。

「これこれこういう理由で資料が欲しいので、その目的にかなうように資料収集をしてくれ。特に、これとこれとこれのポイントは、はずすな。キーワードは、●と△と□だ」

もし、長年一緒に仕事をしていて話がツーカーなCであれば、「悪いが、あれいつものようにやっといて」くらいでも通るかもしれません。

勘がよく信頼のおけるDには、「任せるから、好きにやってくれ」でいいかもしれない。

相手を見て指示を出さなければいけません。全部Dのような指示を出したら、ほかのタイプはひっくり返ります。いずれにしろ、この例は上司の方に問題があると思います。

言いたかったことは、相手の立場になるというのは実は中途半端なことだということです。さきほどのAだったら、「俺がBの立場なら、しのごの言わず、すぐに資料集めに走るのに」くらいしか思いつかないかもしれません。

ともかく、相手の感受性を理解せずに、また人間分析をせずして、相手の立場に立つことはかえって害を招くくらいに私は考えております。

ほめる訓練にはよい対象を選ぶ

私の講座では、「ほめること」を職場や家庭などで実際にやってみて、それについて分析してレポートを提出していただくことにしています。

ちょっと前ですが、講座を受講されたある方は、散々考えたのだが、どうしてもほめる対象を自分のまわりに見つけられず、ついに締め切りがきてしまった。

そこで、自分の飼っている犬をほめたというのです。

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これには、私も驚愕しました。

効果はそこそこあったらしいんですがね。犬と言っても人間の三歳児くらいの理解力はあるといいますから、簡単な言葉なら通じるでしょう。たぶん、犬好きの方は全面的に同意してくださると思います。

もし犬が三歳児なみであるなら、非常に純真でしょうから、ほめればとてもよろこんで言うことをきいてくれるかもしれないなと私は思いました。

私はどうコメントを返したかって?

「機転がきいていて、素晴らしい」と一応ほめましたよ。

でも、それ以後は、動物や自分自身をほめることは禁止しました。

動物と違って大人の人間はなかなか一筋縄ではいかない。それを練習しないといけないのですね。

だいたい、人間は、自分の思っていることを正直になんかなかなか言わないですから。だから、顔色見たり、態度を観察して、本当の肚を見抜かないといけません。

そういう訓練もしてほしいんですけれどね。

「京の茶漬け」という落語を知っていますか?

京都ではお客さんが帰ろうとして、履き物をはいてしまってから、「お茶漬でも一膳食べておいんなはれ」という習慣があるそうです。まさか「そうどすか」とは言わないことを見込んで言うのだと、京の人の悪口をいう人がいました。

ある大阪の商人が、一度あの「京の茶漬」を食べてやろうと、わざわざ昼時に京都の知人を訪ねていきました。

「何もおへんけど、お茶漬けでも一膳……」

予想どおり、客の帰りがけを狙って言う、例の京都人のカラ世辞がでました。
しめしめと、大阪商人。

「さよか、ほんならよばれましょ」

ところが、でてきたのは、ほんとに冷や飯と梅干し半分の茶漬けだけ。

意地になった大阪商人は、サラサラとかきこんでから、茶碗を宙に浮かしました。これ見よがしですね。「どうぞ、おかわり」の声を待ったわけです。

しかし、京のお内儀は何も言わない。

大阪商人は仕方ないので、茶碗をほめました。

「けっこうな清水焼ですな。たこうおましたやろ」

茶碗をひね繰り返しながら、茶碗の中がカラなのをなんとか見せつけようと言う。

すると、お内儀のほうは、

「はぁ、このおひつも輪島塗りですねん」

カラのおひつを、中まで見えるようにさし上げた。

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■リーダーシップ向上に関する参考書籍

本稿は佐藤直曉著『リーダー感覚――人を指導する喜び』(鳥影社)の一部を抜粋引用しながら、加筆したものです。

本書はL研リーダースクールの通信講座初等科Ⅰのメインテキストです。初等科Ⅰでは、人の心を動かす訓練としてほめる訓練を実践していただきます。この講座は、受講生に技術的アドバイスを行うとともに、受講生の成長を見守っていく実践型プログラムです。

解説・立読みはこちらからどうぞ

リーダーの暗示学

イメージを相手に浮かばせる言葉を『暗示』といいます。これを技術としてまで使えるようにする方法論を述べているのが拙著『リーダーの暗示学』です。

今日は拙著『リーダーの暗示学』と感受性の関係についてお話をいたしましょう。

相手が無意識に浮かべるイメージをコントロールし、部下の否定的なイメージを壊し、積極的な態度に変えることを『リーダーの暗示学』では提唱しております。また、その方法論や事例を載せています。

そのなかで、吉田茂とマッカーサーの対談風景を書いている部分があるので紹介いたしましょう。

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この会談は、昭和20年9月、吉田茂が外務大臣に就任してすぐのことでした。

このとき、日本を統治していた占領軍司令官のマッカーサーと吉田は初めて会うわけです。昭和天皇とマッカーサー司令長官の会見をセットアップする打ち合わせでした。

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会談がはじまると、マッカーサーは執務室の中を行ったり来たりしながら吉田に話す。これはマッカーサーの癖であった。吉田はマッカーサーの言葉を聞き漏らすまいと、マッカーサーの動きに合わせて、体の向きをしょっちゅう変えなければならなかった。

そういうことがしばらく続いているうち、吉田の脳裏に、ふと、檻のなかでうろうろして歩きまわるライオンの姿が浮かんだ。吉田は思わず吹き出してしまった。

マッカーサーは、どうして吉田が笑ったのか、理由をたずねた。吉田は困ったと思ったが、平然と答えた。

「ライオンの檻の中で講義を聴いているみたいだ」

すると、マッカーサーは、吉田の顔を見て、自分もゲラゲラ笑い出した。

マッカーサーの態度について、工藤美代子氏は次のように述べている。

「およそユーモアを解するとも思えないマッカーサーが、吉田の言葉に大笑いをしたのは不思議な感もする。老練な外交官である吉田は、いつのまにか相手の心を取り込むすべを知っていたのかもしれない。また、吉田の英語力が、当時の日本人としてはズバ抜けていたのだとも解釈できる」(工藤美代子『マッカーサー伝説』恒文社21)

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さて、その後マッカーサーと吉田はたいへんよい人間関係を築くことができたようです。吉田はマッカーサーに信頼されたの数少ない日本人の一人でした。私は、その原因が、このときの初対面の会話にあったような気がしています。

吉田茂の言葉は暗示効果をもたらしたと私は考えています。マッカーサーに対して、あるイメージを提供したのです。

この場合、マッカーサーの感受性と吉田茂の言葉がピッタリ合わないと、そういう効果はでません。

では、マッカーサーの感受性はどんなものであったか。

マッカーサーという人はとにかく自己顕示欲が強い人のようでした。自分のことを「マッカーサーはこう言った」とか「マッカーサーはそう思わない」などと日ごろから言うのだそうです。

マッカーサーは自分の演説に酔って、しゃべり出すととならない癖がありました。普段の会話でもそうで、いつの間にか独演会になってしまうのだそうです。

そのわりに社交は好きではないようで、社交はもっぱら婦人に任せていたようです。

あとは、青年時代に胸を病んでいます。

ということで、マッカーサーがどんな感受性かは、私と長いこと付き合ってくださっておられる人ならおわかりでしょう。

マッカーサーは自己陶酔の権化のような人です。そのマッカーサーに向けられた吉田茂の言葉が、マッカーサーの脳裏にどんな化学反応をもたらしたのか……。

詳しいことは拙著をお読みいただくとして、とにかく相手の感受性にぴったりあった言葉が出ると、効果はすごいものがあります。

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■リーダーの暗示学に関する参考書籍

本稿は佐藤直曉著『リーダーの暗示学――部下の心をリードする』(鳥影社)の一部を抜粋引用しながら、加筆したものです。

本書は、リーダーシップを実践的につける訓練法を紹介しています

解説はこちらからどうぞ

相手がどんなタイプかわかるとコミュニケーションの質が変わる

相手の感受性に応じて話かける――これはかなり高度な人間分析力がないとできないことですが、これができると非常にコミュニケーションが楽になります。

相手の行動の癖が読めるともいえます。相手が見えるというのは、こういう状態でしょうね。

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たとえば、壁にスローガンをべたべた貼り付ける人がいます。

「受験 必勝!」とかですね。

いつぞや、あるテレビ番組で、レスリングのメダリスト浜口京子さんの道場を紹介しておりました。もちろん、オヤジさんのアニマル浜口も一緒。

アニマルさんの道場に行くと、「勝つぞ」といった類の張り紙が、壁にあふれんばかり。

もうベタベタと貼ってあるのです。それはすごいものでしたよ。

それを練習前に一つ一つ声を出して読み上げるのだそうです。この過剰さ。

あるタイプの人は、彼のようにスローガンを書いてそれを忠実に実行していこうとします。

スクワット1日1000回、腕立て伏せ1000回とかの目標をどんどん貼るんです。そして、それを絶対日課として実行していく。

こういう人は決めたことは絶対実行します。その忍耐心たるやすごい。とても他のタイプの人にはできませんね。

もし、このタイプが決めたことを実行できなくなると、それだけで半分死んだようになりますね。それぐらい命がけでやっているとも言えます。

こういう人がいたら、だいたいどのように話をもちかければいいかは、わかっています。

ところが、こういうことをする人が大嫌いというタイプもおります。

「ダサイな。もっと要領よくセンス良くやったらいいのに」

こういうことを感じるのも、感受性です。

ですから、こういう人がいたら、どう対応したらいいかもわかります。

みなさんも、研究してみてくださいね。

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■人間分析に関する参考書籍

佐藤直曉著『リーダーの人間行動学』は、人間の行動基準パターンとその理論を簡単に紹介しながら、応用として、歴史上の人物の行動分析を行っています。歴史上の人物には極めて強い個性をもっている人が多く、そのため特徴がはっきりでやすく、人間分析が比較的容易です。したがって、勉強材料としてとてもよいのです。

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各人物には、それぞれ質問を用意してありますので、読者はそれを考えれば、一層人間分析の意味が理解できるでしょう。

リーダーの人間分析講座,コミュニケーション力をつける-リーダーの人間行動学

立読み

営業マンのお客とのコミュニケーション

営業の前に自分を売れ、というのが鉄則だと言われます。

つまり、人間関係をつくればいいということ。

それも、お客さんと会った瞬間にそれをつくれというのですから、営業とはたいへんな仕事ですね。

そこで、売れっ子の営業マンは、たいていお客さんの重要性を認める作業をする。

要はほめることなんだって。

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家に花が飾ってあればほめる。子供がいれば「可愛い子」とほめる。ありとあらゆるものが、ネタになりうるんだって。

企業を訪問すれば、従業員の態度をほめる。オフィスの品格をほめる。出てきた人の持ち物、たとえば時計をほめる。

さらには、質問をする。「いい、時計をお持ちですね」より、「それは、どういう時計ですか?」と聞いた方がベターなんだそうだ。

なあんだ、これって、L研リーダースクールの初等科1で訓練していることじゃない。

9週間コースで、みっちり勉強できますよ。

L研リーダースクール初等科1

リーダーとしての立場を保つ

今日は、コミュニケーション以前の問題です。コミュニケーションというのは、実際にはコミュニケーション以前の問題が多々あると思いますね。今日のテーマはリーダーの心構えに属することです。

自信のないリーダーは、自分の有能さを誇示したい、自分を認めてもらいたいと思い、そのあげく部下と競争します。これはリーダーとして、いちばんしてはいけないことです。

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リーダーと部下の年齢が近い場合、あるいはリーダーより部下のほうが年齢が上の場合、このようなことがよく起きます。部下も部下で、こんな若いリーダーに負けてたまるかと思いますから、どうしても険悪な関係になりがちです。

実力のないリーダーほど、部下を支配しようとして怒鳴り散らすものです。なかには部下をおだてて動かそうとするリーダーもいますが、このタイプも相手を操作しようとしている点では変わりありません。

実は、私はこの件で大失敗したことがあります

ある人が「戦略案をつくっても、ラインがそれを採用してくれない」と、愚痴をこぼしたのを聞いて、私は「あなたの戦略策定能力に、どこか弱点があるのではないか」と言いました。すると、相手は猛反発しました。

このような反応は、実は私の指摘が図星だったからです。自分の身を守りたいと思うと、人間はそうやって猛反発するものなのです。しかし、相手がそのような反発を示したのは私の失敗でした。欠点を指摘するときは、相手を選んで慎重にしなければいけないといつも言っている私が、失敗してしまったのです。

しかし、私が失敗したのは、相手の心の余裕を見損なったからではありません。実は、相手が生意気で小憎らしいと思ったから、つい嫌味を言ってしまったのです。

度量が小さいリーダーは、部下を認めずに批判したり嫌味を言います。批判や嫌味を言うのは、部下と同列にいて、部下と競争しているのと同じことです。リーダーはそういうことをしないよう、常に自分を戒めていなければなりません。

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■リーダーシップ向上に関する参考書籍

本稿は佐藤直曉著『リーダー感覚――人を指導する喜び』(鳥影社)の一部を抜粋引用しながら、加筆したものです。

本書はL研リーダースクールの通信講座初等科Ⅰのメインテキストです。初等科Ⅰでは、人の心を動かす訓練としてほめる訓練を実践していただきます。この講座は、受講生に技術的アドバイスを行うとともに、受講生の成長を見守っていく実践型プログラムです。

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