人間関係を改善するノウハウはいたるところで見つけることができます。
しかし、リーダーとしてこれを改善しようとするならば、付け焼き刃のノウハウだけに頼っていては限界があると思います。
時間はかかるが、人間を見る眼をしっかりつけるしかありません。
人間を見る眼というといかにもあいまいですが、私は次の二つの条件を考えます。
- 相手の行動が読めること(なぜそのような行動をするのか理解できること)
- 相手の行動を改善するためにどのような手段をとればよいかがわかること
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最初の項は、相手の行動基準がわかることです。どんな価値観から、現在の行動が引き起こされているかが理解できること。
二番目の項は、第一項に基づいて、相手の価値観に基づいたこちらの提案を行う、ということです。説得とは、相手の価値観にとってメリットがあることであり、こちらの価値観でどうのこうのといっても無理なのです
拙著『リーダーの人間行動学』の冒頭部分を提示します。
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人間の価値観には10種類あります。そのどれを重視している人かを見極めると、リーダーシップが格段につきます。
コミュニケーションスキルと感受性の知識を併せ持つことが、これからのリーダーにとって、たしなみになるということです。
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船が座礁してしまい、乗客は救命ボートに乗り移ろうとしました。ところが、人数が多すぎて、何人かは岸まで泳いでいかなければなりません。どうやって説得するか。
イギリス人には
「ジェントルマンらしく行動してくれ」
ドイツ人には
「船長の命令である」
イタリア人には
「君は飛び込むな」
アメリカ人には
「保険に入っているから大丈夫」
日本人には
「みなさん、泳いでいますよ」
傑作なジョークですよね。いつも笑ってしまいます。
しかし、これはなかなか含蓄のあるジョークでもあります。つまり、人間は何によって動かされるかということなんです。
結局、人間はすべて合理的に行動しているのです。ただ、その合理性が他の人と一致しないだけなのだと思います。
その合理性とは、結局のところ価値観といえます。何を大事にしているか、ということです。
イギリス人は社会的名声をとても大事にしている。
アメリカ人は経済的利益をとても重視しています。
日本人は、組織の中での調和を重視しています。
これは人間の価値観の類型です。日本人のなかにも、イギリス人的価値観やアメリカ人的価値観をもっている人が当然おります。
説得のためにコミュニケーションを行おうとするとき、相手の価値観をしっかり認識しないと、まるで外国語で話しかけるようなことになります。
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■佐藤直曉著『リーダーの人間行動学』
人間の行動基準パターンとその理論を簡単に紹介しながら、応用として、歴史上の人物の行動分析を行っています。歴史上の人物には極めて強い個性をもっている人が多く、そのため特徴がはっきりでやすく、人間分析が比較的容易です。したがって、勉強材料としてとてもよいのです。
扱っている人物は、南極探検家スコット、乃木希典、空海と最澄、ショパンとジョルジュサンドです。 いずれも、極めてユニークな個性の持ち主ですので、特徴がわかりやすく、理解しやすくなっています。
各人物には、それぞれ質問を用意してありますので、読者はそれを考えれば、一層人間分析の意味が理解できるでしょう。
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