仕事を任せるときのコミュニケーション

はじめにお知らせから。

L研リーダースクールでは、人間行動学のセミナーを5月25日(土曜)、午後1時半から4時半まで東京銀座にて行います。費用は3000円です。

セミナーでは、人間分析について、ご紹介していきたいと思っています。

拙著『リーダーの人間行動学』では簡単な説明にとどめておりますが、もう少し具体的なことをお話してみたいと思っております。

→詳細・お申込みはこちらにございます。

では、本題に入ります。

今回は、健康プラザコーワ、ドクターユキオフィス代表取締役 臼井由妃氏の記事をご紹介しながら、意見を述べてみましょう。

成功の秘訣「やらない」「断る」「捨てる」 (プレジデント) – Yahoo!ニュース BUSINESS

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臼井氏がどういう方かよく存じませんが、記事の内容はなるほどと思わせることが多々あります。

そのなかで、リーダーのコミュニケーションに関連する内容をピックアップしてみました。

リーダーが部下に仕事を任せるときはどうするか。

マネジメントの観点からいえば、ゴールと制約を提示するということでしょう。

制約というのは、逆に言えば自由度ということです。

人間、何もかもやることが決められていたら、おもしろくもなんともない。

仕事の楽しみはなんといっても創意工夫することです。これは人間としての自由の欲求にかなうことです。

ですから、自由裁量の余地を与えないといけません。しかし、一方であまりに自由にされてしまうと、能力を超えていると思い不安になります。

さらにひどいのは丸投げです。これはリーダーが部下の仕事の品質を管理しない、いや管理できないことを意味するので、リーダーに対する信頼は地に落ちます。

ともかく、ゴールの設定と制約の設定は、仕事を任せるうえでの基本です。そして、仕事の進捗管理。これもマネジメントに不可欠です。

臼井氏の言葉です。

経験の浅い部下に仕事を任せるときは、寄り添うようなアドバイスや指導が必要です。私の場合は、仕事を任せるとき、まず最終的な到達地点を具体的にイメージできるよう説明し、納期を定めてスタートダッシュをかけ、次に中間地点で状況把握をするようにしています。腰の重い社員もいますから、中間地点に達しても、ほとんどできていないということもままあります。

そのときには、叱るのではなく「できない理由」を解きほぐして、ゴールまで伴走するように心がけます。できない理由は技量不足のこともあれば、優先順位のつけ方に問題があることも。近ごろ目立つのは、完璧な仕上げを目指すあまり、堂々巡りをしているというケースです。

では、これだけでいいかというと、コミュニケーションがまだ不足しています。

臼井氏はこんことを言っています。

一番よくないのは「忙しいから部下に仕事を頼む」という姿勢です。相手は敏感に「自分はたまたま暇そうに見えるから任されたのか」と思います。これでは部下のモチベーションは上がりません。

そうではなく、「私を成長させようと思って仕事を与えてくれた」と思わせなければいけません。それには「なぜ特定の相手にその仕事を振るのか」についての納得できる理由が必要です。

たとえば「○○さんは学生時代にデザインを専攻していたね。その知識や感覚が生かせると思うから、今度の仕事を担当してほしい」と言うのです。言外には「あなただから任せるんですよ」というメッセージが込められています。

ところで、このようなメッセージを発するためには、常に相手のことを知っていないといけませんね。

どんなに小さな組織であっても、リーダーたるものは常にメンバーの個性を把握しておかなければいけません。何が得手で何が苦手か、何を言われると喜ぶかということを、漠然とでいいから日ごろから注意深く見ておくのです。そうしないと、いざ仕事を任せるときに「理由」が出てこなくて困るでしょう。

そこで、人間をしっかり見る力が必要になるわけです。そのための勉強をすることは、リーダーにとってものすごくきいてきます。

私は人間を見る力をつけるとっかかりとして、感受性分析を学ぶのがとてもよいと思って、人にも勧めています。「リーダーの人間行動学」はその導入編とでもいいましょうか。

セミナーも5月25日(土)の午後に行いますので、お近くの方は是非おいでください。

→詳細・お申込みはこちらにございます。

拙著『リーダーの人間行動学』の冒頭部分を提示します。

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人間の価値観には10種類あります。そのどれを重視している人かを見極めると、リーダーシップが格段につきます。

コミュニケーションスキルと感受性の知識を併せ持つことが、これからのリーダーにとって、たしなみになるということです。

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船が座礁してしまい、乗客は救命ボートに乗り移ろうとしました。ところが、人数が多すぎて、何人かは岸まで泳いでいかなければなりません。どうやって説得するか。

イギリス人には
「ジェントルマンらしく行動してくれ」

ドイツ人には
「船長の命令である」

イタリア人には
「君は飛び込むな」

アメリカ人には
「保険に入っているから大丈夫」

日本人には
「みなさん、泳いでいますよ」

傑作なジョークですよね。いつも笑ってしまいます。

しかし、これはなかなか含蓄のあるジョークでもあります。つまり、人間は何によって動かされるかということなんです。

結局、人間はすべて合理的に行動しているのです。ただ、その合理性が他の人と一致しないだけなのだと思います。

その合理性とは、結局のところ価値観といえます。何を大事にしているか、ということです。

イギリス人は社会的名声をとても大事にしている。

アメリカ人は経済的利益をとても重視しています。

日本人は、組織の中での調和を重視しています。

これは人間の価値観の類型です。日本人のなかにも、イギリス人的価値観やアメリカ人的価値観をもっている人が当然おります。

説得のためにコミュニケーションを行おうとするとき、相手の価値観をしっかり認識しないと、まるで外国語で話しかけるようなことになります。

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Banar seminar525

■佐藤直曉著『リーダーの人間行動学』
人間の行動基準パターンとその理論を簡単に紹介しながら、応用として、歴史上の人物の行動分析を行っています。歴史上の人物には極めて強い個性をもっている人が多く、そのため特徴がはっきりでやすく、人間分析が比較的容易です。したがって、勉強材料としてとてもよいのです。

扱っている人物は、南極探検家スコット、乃木希典、空海と最澄、ショパンとジョルジュサンドです。 いずれも、極めてユニークな個性の持ち主ですので、特徴がわかりやすく、理解しやすくなっています。

各人物には、それぞれ質問を用意してありますので、読者はそれを考えれば、一層人間分析の意味が理解できるでしょう。

リーダーの人間行動学
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コミュニケーションで気を合わせる

言葉以前に、波長を合わせる、もっと言えば、気を合わせる、ということは実際にはとても大事です。

いやなやつだな、と思っていたら、とてもじゃないが話を聞く気になりませんね。たとえ、それがどんなにいい話でも、かなりの確率で反発を買うか無視されます。

よいコミュニケーションのためには、ラポール(精神的な感応)が必要になります。

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ドラッカーのコミュニケーション論を考える

久しぶりにドラッカーを読み直そうと思いました。そこで思わぬ発見をしました。

ドラッカーがコミュニケーションについて語っているとはまったく予想していなかったのです。ところが、たまたまページをめくったらそれを見つけたのです。

私がドラッカーを読んだのは20代後半から30代前半で、当時は戦略に興味があり、コミュニケーションを扱うつもりはまったくありませんでした。

今回読んでみると、ドラッカーは「コミュニケーションは期待だ」と言っています。

「人は、自分が期待する事柄しか知覚しない」のです。もっと簡単に言えば、人は見たいことしか見ず、聞きたいことしか聞かない。

だから、私は若いころ、ドラッカーのコミュニケーション論は見落としていたということでしょう。

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このことから、相手とコミュニケーションをとるには、相手の期待を察知しないといけないということがわかります。

ドラッカーの言うように、コミュニケーションを成り立たせるには、受け手が何を見聞きしたいと考えているか、把握しておかなければならないのです。

ドラッカーはソクラテスの言葉を引用しています。

人々に何か言うときは、相手の経験に引きつけた中味にするとよい。たとえば相手が大工だったら、大工仕事に関係した比喩を用いるのだ。つまり、受け手の言葉を使わない限りコミュニケーションは成り立たない。しかも、その言葉は経験に根ざしたものでなくてはいけない。言葉の意味を人々に説明するのはムダな試みである。経験にねざしていない言葉は受け止めようがない。

コミュニケーションは、相手を起点にして語りかけなければいけないということです。ところが、上意下達のコミュニケーションには、命令しかありません。このようなことでは、受け手は自発性なくただ反応するにすぎません。

「従業員への手紙」も、従業員が何を知覚できるか、何を知覚の対象としているかをわかっていないかぎり、どれだけ文章がうまくても無意味だということでしょう。

書き手の知覚ではなく、受け手の知覚を土台としない限り、コミュニケーションは成り立ちません。

では、どのようにすればそれができるようになるか。

真っ先に考えるのは「相手の言葉に耳を傾ける」ことでしょう。しかし、ドラッカーはそれは単なるコミュニケーションの第一歩にすぎないと言います。

「語りかけるよりも耳を傾ける方が、誤解やコミュニケーションの不備が減るわけではない」と、ドラッカーは言っています。

聞くことで、誤解が起きた理由は説明できるかもしれませんが、これだけでは、部下の嗜好や望み、価値観、野心などは明らかにならないのです。

ただ聞くだけでは、相手の理解のための土台が築かれるわけではないわけです。もっと相手のことがわからないといけないとドラッカーは言っています。

ドラッカーは、その対策として「目標管理」をあげています。私はそれでは正直不足だと考えていますが、ともかくそれについて説明しましょう。

つまり、ある目標を共通のテーマとして上司と部下が話し合うとき、同じ現実を違った目で見ていることがお互いわかるというわけです。そして、それをもとに、上司は部下が何を期待しているかを理解できる。

私はこれではまだ難しいと思っています。相手の価値観を理解するには、これだけでは知識不足です。

相手の価値観を知るためには、体癖論に基づく感受性をしっかり学ぶことがたいへん有効だと、ドラッカーを読んであらためて確信した次第です。