ほめることが効果があることを紹介したところ、一生懸命やってみてくださった社長さんがおりました。
ところが、だんだん顔つきが暗くなってきた。どうしたのですかとたずねると
「いくら考えても部下のほめるところが見つからない」
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有能な人からしたら、みなバカに見えるのでしょうかね。
こういう人には、正直どう言ったら良いかよくわかりません。誰か教えてください。
あるいは、人間を見る眼があまりにも硬直的なのかもしれません。
人間に必要な、あるいは自分の会社に必要な資質は、これとこれ、と決め込んでいるのか。
あるいは、欠点ばかりが眼につくのか。
しかし、よく考えてみれば、長所も短所も同じなのです。それをどう見るかということでしょう。
たとえば、無口な人は口が硬いと言えなくもない。
おしゃべりな人は、座持ちがいい。
要はシチュエーション次第ということでしょうね。ある状況ではうまくないことが、別の状況では役に立つ。
荘子にこんな話があります。
高徳の隠者が商丘という土地に出掛けた折に、とても大きな木を見つけた。木陰で馬車が千台は休めるだろう思われるほどの大きさだった。
「なんて素晴らしい木だろう」
隠者は感心し、近寄って繁々見ると気付くことがあった。枝は曲がりくねって、棟木や梁に適さない。幹は空洞化して平板にもならない。葉は毒素を含んでいるようで、臭いは悪臭を放って酷いものだった。
「なるほど、これは何の役にも立たない木だ。しかし、役立たずだからこそ、誰にも伐られずここまで成長できたのだろう。人間も同じこと、天寿を全うするには不材無用の役立たず人間でなければならん」
今日は、シチュエーションをよく考えて人を使う、ということでした。
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■リーダー感覚に関する参考書籍
本稿は佐藤直曉著『リーダー感覚――人を指導する喜び』(鳥影社)の一部を抜粋引用しながら、加筆したものです。
本書は、リーダーシップを実践的につける訓練法を紹介しています。極めて泥臭いが現実的な方法論です。