ほめる技術は人間関係の潤滑油になる

もう何年も前に亡くなった私の父は、晩年、ぼけが進んでいました。その父を連れてパン屋さんにパンを買いに行ったことがありました。

パンを何種類かトレイに載せて、二人でレジに向かいました。

レジの係は若い男性で、白衣のようなものを着て、頭に白い帽子をかぶっておりました。

彼はいつものようにたんたんと袋にパンをつめていました。

そのとき、突然父が口を開きました。

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「あんた、いい仕事ぶりだねえ」

すると、このレジ係は突然のことに驚いたようでしたが、顔を急に緩め、ニコニコしだしたのです。そして、すっかりのってきたように見えました。見ず知らずの老人にちょっと言われただけで、こんなに態度が変わることに、私も内心驚愕しました。

いま思えば、私の父はあちこちの店で似たようなことを言っていたようです。

ぼけてはいても、いやぼけていたからこそ、世間受けする世渡り術だけは忘れないようにしていたのかも知れません。

それはともかく、あんなにうれしそうな店員の顔は、パン屋以外のお店の店員を含めて、あとにも先にも見たことがありませんでした。

ほめる技術はいろいろな場面で使えます。応用範囲をどんどん広げて使っていただきたいものです。それが、人間関係、もっと大きく言えば、社会の潤滑油になりうると思います。

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