コミュニケーションと承認欲求

承認欲求とは

私の理想とする指導とは、メンバー一人ひとりの興味と能力が満たされるように、個別指導が的確に行われることです。

なぜそういうものが必要とされ、またリーダーに求められるのかというと、人間には、「自分を認めてほしい」という、根源的欲求が存在するからです。心理学者のマズローは、これを社会的承認欲求と呼んでいます。

多くの人は、認められることに飢えています。ですから、認められるということは、動機づけに強く影響するのです。

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にもかかわらず、実に寂しいことですが、サラリーマンはほとんどほめられる機会がありません。ですから、ちょっとほめられただけでも感激する人が多いのです。もし、社長からほめられようものなら、サラリーマンは天にも昇る気持ちになります。

ところが、社長のような地位にある人物でさえ、ほめられると素直に喜びます。このことを知ったとき、私は正直いって意外な感じがしました。もっとも、地位が上の人ほど勲章をほしくなるというのですから、認められたいという心理は地位には関係ないのでしょう。

 

パットン将軍の巧みさ

経営学がモチベーションに気づくずっと以前から、軍隊はこの問題に関心をもっていました。しかし多くの将軍にとって、士気を高める対策をたてることは、軍事技術を研究するのと同じくらい、いやそれ以上に難しいことのようでした。

第二次世界大戦において、勇猛果敢でならしたパットン将軍も、ずいぶん熱心に研究していたようです。

パットン将軍は、「どのように兵に接すれば、兵は認められたと受けとめるか」ということに強い関心を払っていました。

彼は、上級将校ができるだけ前線視察することを勧めています。その際には、「姿を見せる将校の階級が高いほど、また護衛兵の数が少ないほど、兵士に与える効果は高い。視察にある程度の危険が伴うなら、その価値はさらに上がる」としています。

また、兵士を鼓舞するために前線に出かける将校に対して、「後方へ戻る姿を絶対兵隊に見せるな」と、忠告しています。

「前線へ向かうときは兵隊に見えるようにジープに乗り、帰りは飛行機にしろ」というわけです。このほか「寒中でも、将官は兵士より暖衣を身に着けているという印象を与えぬように」と、細かい注意を与えています。

計算しつくされたところが嫌味に思えますが、それでもそういう配慮をしてくれる将軍のほうが、兵にとってはまだ有り難いのかもしれません。

余談ですが、第二次世界大戦で、戦争についての広報および広報官が、世界で初めてアメリカで採用されました。前線のアメリカ兵のまわりには、広告代理店やPR制作会社がつきまとい、英雄を故国に紹介しました。アメリカ兵たちは、新聞や映画によって、自分たちの功績が故郷に伝えられることにたいへん関心をもち、誇りを感じたようです。

広報が承認欲求を満たすために用いられるところなど、いかにもアメリカ的な話ですね。

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■コミュニケーションスキルの教科書『リーダー感覚』

解説はこちら

本稿は佐藤直曉著『リーダー感覚――人を指導する喜び』(鳥影社)の一部を抜粋引用しながら、加筆したものです。