コミュニケーションに影響を与える状況の設定

コミュニケーションの目的は、お互いの理解ということでしょう。となれば、相手の感受性にふさわしい話し方をしないといけないわけです。

数学にちんぷんかんな人に、数字や数式で話しても理解されないでしょう。それよりは、「東京ドーム100個分だ」などと言った方がわかりがいい。もっとも、こんなのは感受性の理解以前の問題ですが。

さて、コミュニケーションにおいては、状況の設定について考察することもとても大事です。

これはコミュニケーション以前の問題であり、「交渉のノウハウ」というような本によく出てくるテーマですが、コミュニケーションを研究する者にとっても役にたつことが多いでしょう。

たとえば、「時間を区切る権利」をどちらが持っているかというようなことは、コミュニケーションに多大な影響をもたらします。

不動産屋と交渉すると、こんなことをよく言いますね。

「明日までこの物件を確保しておきます。それを過ぎたら別のお客さんが待っていますので」

これは売り手の方が、時間を区切る権利をもっていて、買い手は弱い立場にあります。もちろん、この区切りが本当かどうかはわかりませんが。

情報商材あたりも、よくこの手を使いますね。

「あと24時間で、このオファーは終りです」

買い手はつい焦って買ってしまう。

年度末になれば、尊大なデパートにも価格交渉ができるかもしれません。同様に、野田政権も、国会の会期切れになるとたいへん苦労してきます。

ということで、どちらが時間のプレッシャーを受けているかによってコミュニケーションの方法に大きな影響がでてきます。

ほかにもいろいろな例がありますが、コミュニケーションの土台を意図的に壊すと脅すようなこともありえるわけです。

たとえば、駄々っ子の交渉術だって存在しうるわけです。

おもちゃ屋さんで親が小さな安い機関車のおもちゃを買おうと思っていたら、子供は大きくて高価な機関車を取りあげ、胸に抱き込んではなさない。

そのうえ、おもちゃ屋さんの店頭で「これ買ってくれなきゃ、いやだ~」と泣き叫ぶ。

テコでも動く気配がない。店員さんがニヤニヤ笑ってこっちを見ている。こうなったら、親は降参です。

ところが、こういうことをするのは、子供だけではないようなのです。

北朝鮮などは、交渉の途中で、それまでまったく触れなかった無茶苦茶な難題を突然もち出してきます。交渉相手が憤慨すると「そこまで言うなら、それはやめよう。その代わり初期の通りで交渉妥結といこう」などと言います。

ふっかけですよね。こんなのはロジカルシンキングでは出てくるはずもない態度です。ロジカルシンキングを得意とするような人は、あわてて引っかかっちゃうかもしれません。

ロジカルシンキングに基づくコミュニケーションなどはいわば初心者のための手段であって、現実のコミュニケーションや交渉ごとでは、それをはるかに越えたところで行われるものです。