コミュニケーションスキル:説得の技術

 コミュニケーションにおいて重要な、説得のセオリーについて概略を示しましょう。
 1 相手のやったことを認める、相手をほめる
       ↓
 2 相手が聞く耳をもつようになる
       ↓
 3 相手にとってもっとよい道理を述べて、こちらの意見につくよう説得する
       ↓
 4 相手の意見が変わる
 

一例を示しましょう。

 ある住宅販売の営業ウーマンが管理業務に異動させられ、会社をやめて独立しようかと思っている、相談にのって欲しいと、やってきました。

 私は、ただ彼女の言い分を聞いておりました。賛成もしないが、反対もしません。ただ聞くだけです。 そのあと、私はこうほめました。

「たいしたものだ、君のような優秀な営業なら、会社の名前がなくても仕事がとれるわけだね。すごい技術だね」

 それを聞いた彼女は、上司との仲がうまくいっていないことを、それとなくほのめかし始めたのです。

 なるほど、それが真相のようだなと私は思いました。そこで、今度は次のように言いました。

「独立すると言っても、簡単ではない。一年ぐらいかけてじっくり準備するほうがいいのではないか。人脈を広げる必要もあるし、資金を出してくれる協力者も探す必要があるだろう。事務所もいい所を選ばんとな。営業技術ももう一段ブラッシュアップすべきだろうし。それで、会社をやめて、上司をアッと言わせたら快感だよ」

 結局彼女は会社に残りました。それから、しばらくして、上司が移動しました。そのあと、彼女は営業職に復帰しました。

「解説」
 まず1ですが、これには「認める/ほめる技術」が必要になります。これは、相手の行動や言動について、認めたりほめたりすることですが、それによって相手の自尊心が満たされ、こちらの言い分に対して聞く耳をもつようになるのです。ですから、1は説得のための準備作業といえます。今のケースでは、「たいした営業技術だ」と相手に語ったところがその部分です。

 それから、その前に、私は相手の話をじっと聞いております。できるだけ相手に話をさせています。これも重要な準備作業なのです。話すと人間は緊張が取れ、本音を話すようになるからです。これは心理カウンセラーが良く使っているテクニックです。たとえ相手が間違った意見をもっているのがわかっていても、この段階では絶対反論してはいけません。

 なお、相手を評価する言葉を投げかげる場合には、「ほめる技術」が参考になります。

 さて、3では、いよいよ説得を行います。「説得の論理」ということです。ここで、どのような言い回しをするのが、相手に適しているかをあらかじめ知っていなければなりません。

 理屈で説得されやすい人、情で訴えると理解しやすい人など、いろいろなタイプがおりますから、それをよく判断して、適切な説得の言葉を選ばなければなりません。そのためには、人間の「感受性」についての理解が不可欠です。

 もうひとつ大事なのが、「説得の展開方法」です。どこから話題を切り出すかということですね。いきなり相手が拒否するような話から入るのは愚策です。まずは、相手が受け入れやすいところから着手するのが定石です。「伝動戦略」や「暗示型戦略」は、非常に有効な展開方法になります。これらについても、カテゴリやブックマークから参照してください。

 さらに、説得において、暗示を組み入れるかどうかも重要なポイントです。別に暗示を用いなくても説得できますが、これを組み入れると、非常にインパクトが強くなります。暗示技術というのは、たびたび当ブログで述べておりますが、相手にいかにこちらの狙いどおりの空想させるかが勝負なのです。

 今のケースでは、私は「一年間、準備をいろいろしてみたら」と提案し、具体的内容も示しました。それらを示すと、彼女の脳裏には、「独立するのはたいへんなことだ」という空想がわいたのです。もちろん、それが私の狙いでした。

 暗示と空想については拙著『リーダーの暗示学』を参照してください。

説得の技術