対立に固執しないコミュニケーション戦略

対立が生じると、ついそれにとらわれてしまう悪い癖を我々はもっています。

対立に夢中になって、障害を取り除くことばかりに気をとられていると、どうしても視野が狭まってしまう。もっと視野を広げれば簡単に物事を処理できるのに、それに気づけなくなります。

次の会話を考えていただきましょう。

お母さんは翔くんに勉強させたい一心で、必死になるあまりこんな小言を言う。

「宿題ちゃんとすませたの? サッカーゲームばっかりやってちゃダメじゃない。そんなことじゃ、良い学校には入れないわよ」

翔くんはやんわりと応じる。

「サッカー日本代表のユニフォームを買ってくれたら、もっと勉強するんだけどなあ」

お母さんは一瞬ひるむ。

翔くんはお母さんの弱みをついて交換条件を持ち出してきた。お母さんは翔くんにどうやって勉強させるかという一点に注意が集まっているから、目の前に餌をぶら下げられると逡巡してしまうのだ。

ユニフォームを買うべきかどうか、お母さんの頭の中ではすでに計算が始まっている。お母さんは自分が抱いていた問題の全体像が突然変質しだしたことに気づき当惑するが、時すでに遅しだ。翔くんの罠にはまりつつある。

一点に注意が集まり、それにとらわれると、それが弱みになる。一点に意識がとらわれている方は、極めて危険な状態にあるのだ。相手が巧みなら、必ずそこをついてくる。

よく考えてみれば、勉強とサッカーはまったく関係のないことであるから、あっさり拒絶すればいいだけのことなのだ。

しかし、とらわれがあると、なんとか希望を通したいと妥協点を求め始めてしまう。こういうときこそ問題を一から考え直すべきなのだが、一端しがみついてしまうと、そこから離れるのは難しい。

拙著『伝動戦略』から引用しましたk2

書いたあと気づいたが、なんだかお母さんが消費税増税に熱心な野田さんみたいに思えてきた。