思い込みはコミュニケーションの妨げになる

もうずいぶん前になりますが、自民党代議士の中尾栄一元建設相が受託贈収賄罪に問われた事件がありました。政治資金を若築建設に依頼したのです。

中尾大臣の秘書官が、若築建設の関係者に会いにいったときの話です。

「いくら必要か」

たずねられた秘書官は答えました。

「片手ほど」

翌日、この秘書官に電話が入りました。

「5千万円は無理だが、3千万円ならなんとかなる」

実は秘書官は、5百万円のつもりだったのです。しかし、相手がそう思い込んでいるならと、有り難くそのまま受け取ったのです。

もう一例。

温泉観光地に行ったときのこと。

いかがわしそうな男が寄ってきて言いました。

「お兄さん、おもしろい写真がありますぜ」

「いらない、いらない」

「でも、女の股の写真なんだけどね……」

「ふーん、で、いくらだ?」

観光で気の緩んでいた客はつい買ってしまった。

あとで、写真を見たら、股は股でも「指の股」だった。♪♪

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思い込みはいろんなときに生じます。

希望的観測、イデオロギーによる色眼鏡、欲につられるとき、

しかし、感受性の違いによる思い込みはいちばん困りますね。お互い、親切で悪意がありませんから、なおさら間違いに気がつかない。

空海と最澄のケンカなどは、まさにこれでしょう。

いつもお話ししている例をまた出します(拙著『リーダーの人間行動学』からの引用)。

船が座礁してしまい、乗客は救命ボートに乗り移ろうとしました。ところが、人数が多すぎて、何人かは岸まで泳いでいかなければなりません。どうやって説得するか。

イギリス人には

「ジェントルマンらしく行動してくれ」

ドイツ人には

「船長の命令である」

イタリア人には

「君は飛び込むな」

アメリカ人には

「保険に入っているから大丈夫」

日本人には

「みなさん、泳いでいますよ」

傑作なジョークですよね。いつも笑ってしまいます。

イギリス人は社会的名声をとても大事にしている。

アメリカ人は経済的利益をとても重視しています。

日本人は、組織の中での調和を重視しています。

これは人間の価値観の類型です。ですから、日本人のなかにも、イギリス人的価値観やアメリカ人的価値観をもっている人が当然おります。

ですから、説得のためにコミュニケーションを行おうとするとき、相手の価値観をしっかり認識しないと、まるで外国語で話しかけるようなことになりますね。

佐藤直曉著『リーダーの人間行動学』では、人間の行動基準パターンとその理論を紹介しながら、歴史上の人物の行動分析を行っています。

扱っている人物は、南極探検家スコット、乃木希典、空海と最澄、ショパンとジョルジュサンドです。 いずれも、極めてユニークな個性の持ち主ですので、特徴がわかりやすく、理解しやすくなっています。

各人物には、それぞれ質問を用意してありますので、読者はそれを考えれば、一層人間分析の意味が理解できるでしょう。

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