暗示技術はほめる技術としても使える

「すごい、すごい」「うまいなあ」とほめるばかりが能じゃない。こんなのはダサイ。相手も直接的なほめ方ではかえって警戒するかもしれない。

以下は、『リーダー感覚』ではなく、拙著『リーダーの暗示学』(116-123頁の抜粋)の事例です。

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マッカーサーと吉田の最初の会談

昭和二十年九月二〇日――吉田茂が初めてマッカーサーと会った日である。当時、吉田は外務大臣に就任したばかりだった。

吉田は、昭和天皇とマッカーサーの会見を交渉する目的で、マッカーサーを訪れた。会談が始まると、マッカーサーは執務室の中を行ったり来たりしながら吉田に話をした。

これはマッカーサーの癖だったのである。吉田はマッカーサーの話を聞き漏らすまいと、マッカーサーの動きに合わせて、体の向きをしょっちゅう変えなければならなかった。

しばらくして、吉田は突然吹き出した。マッカーサーを見ていたら、檻の中でうろうろ動きまわるライオンの姿が浮かんだのである。すると、マッカーサーはどうして笑ったのかと尋ねた。

吉田は困ったと思ったが、平然と答えた。
「ライオンの檻の中で講義を聴いているみたいだ」

すると、マッカーサーは、吉田の顔を見て、自分もゲラゲラ笑いだした。

マッカーサーの態度について、工藤美代子は、次のように解説している。

「およそユーモアを解するとも思えないマッカーサーが、吉田の言葉に大笑いをしたのは不思議な感じもする。老練な外交官である吉田は、いつの間にか相手の心を取り込む術(すべ)を知っていたのかもしれない。また、吉田の英語力が、当時の日本人としてはズバ抜けていたのだとも解釈できる(9)」

◆[設問]

なぜマッカーサーが笑いだしたか、その理由を読者に考えていただこう。ヒントをひとつ。マッカーサーが、吉田の言葉から何を空想したかを考えることである。

ちなみに、この会談以降、吉田とマッカーサーの間には、他の日本人との間には見られない良好な関係が続くのだが、すべてはこの時点で決まったと言っても過言ではないように思われる。

答えは『リーダーの暗示学』にありますよ。