褒める技術にまさるものなし

二、三年前の日経新聞に「なぜか褒めあい族」という記事が出ていました。

「最近はただ褒めあう大人が増えている」という、やや批判的な記事でしたね。

ですので、これについての意見を述べてみましょう。

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その前に、記事の概要です。

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伊勢丹浦和店では、「褒めあいカード」なるものがあって、月1枚は同僚の良さをカードにしたため贈り合う。それを「褒め愛ボード」に貼り付ける。

「荷物を床に置こうとしたお客様に、すぐいすを用意。素晴らしいです」

こんな内容のほめ言葉をかけあうらしい。社員には「褒められるとモチベーションが高まる」と好評だそうだ。

就職活動をひかえた学生向けのセミナー会社では、参加者同士でおたがいの長所を褒めあうことをする。

別のセミナー会社代表は「特に若者に自信がもてない人が目立つ。褒めないと勇気がもてず、就職活動や会社を辞めてしまう人が多い」と言う。

焼き鳥チェーンのオーナーは、「若者は注意するより褒めた方が『自分の仕事を見ている』と実感し、がんばれるようだ」と言う。

だが、と日経記事はここからつづける。やりすぎのようなこともあるというのだ。

パソコンに名前や性、年齢などを入力すると、画面を閉じるまでほめ言葉が現れ続けるサイトがある。最近は1日15万件のアクセスを越えることも。もっとも、入力した人は「救われた」と感想を寄せる。

一部では、褒めすぎが反骨心などの喪失につながると、懸念する声もある。

なぜそうまでして褒められたいか。白梅学園大学の汐見学長は「自分に自信のない人を褒めても効果は一時的。企業などはやみくもに褒めるより、本人が自信をもてるように育てることが大事では」と。

「いざこざを避けるために、安易に褒めている面があるのでは」という人もいる。

安易なほめ言葉に慣れた人は、もはや叱れないのではないか、という不安を感じる向きもある。

セミナー会社の代表は「実は不景気になってから、管理職にしかり方を教える研修の以来も増えている」といっている。

記事は最後にこうまとめている。

「ほめ言葉で元気になるのはよいけれど、そのうちしっぺ返しがくる?」

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長くなりましたが、要するに、日経記事は安易に褒めるのはどうか、といいたいようです。

まず、画面に入力するとひたすらほめ言葉が出てくるサイトですが、これは遊びのような物でしょうから、目くじら立てるほどのこともないと思いますけれどね。

それだけ、褒めてほしいと思う人が多い、褒めて育ててくれる人が少ないという証拠であると思います。

「企業などはやみくもに褒めるより、本人が自信をもてるように育てることが大事では」という意見がありましたが、そんなら叱って育てるのか、と反論したくなります。

やはり褒めて育てるしかないのです。そうでないと、多くの人は潰れます。

「本人が自信をもてるように、ほめて育てることが大事だ」というのが私の意見です。

もちろん、やみくもに褒めるのはリーダーとして失格です。私に言わせれば褒める技術を学んでいないリーダーだからそうなるのです。

褒める技術の基本は、「相手の琴線に触れる言葉で褒める」ということです。

なんでも褒めればいいというものではないのです。相手の心に100パーセントピタッとくる言葉が必要なのです。

しかし、最初からそういうことができない人も多いから、とにかくなんでもいいから最初は褒めなさい、と私は指導します。

それから、褒めすぎが反骨心の喪失につながらないかという意見があるようです。褒めすぎは甘やかしに通じると言いたいのかもしれませんね。

褒めるべきか叱るべきか、どちらがよいかという質問は、人間を見極める力がない人が短絡的に結論を出したいのだろうと、私は思っています。

人間には褒めないとダメな人と、叱らないとダメなタイプとがある。それを見分けることがリーダーの能力です。

叱って伸びる人は相当の自信家です。反骨精神がある。こういう人は自信過剰になる傾向があるので、時々天狗の鼻をへし折らないといけない。へし折ってもまだついてくるように指導しないといけませんけどね。出て行ってしまうようでは、指導失敗ということですから。

ただ、そういう人は全体の1割もいないでしょう。だから、叱るのは確率的にいって難しいと思っています。ほとんどの人は褒めたほうが効果があります。

この記事を書いた記者は、多分反骨精神のおうせいなタイプなのでしょう。それで、褒められたい人間が大勢いることが、よく理解できないのではないでしょうか。

叱ってよいタイプとそうでないタイプの見分けができない人がリーダーだったら、まず褒めることから入りなさいと、私は勧めます。だんだん人を見る眼を養って、いろんな人に対処できるリーダーになってもらいたいと思います。

不景気になって叱り方を教えてほしいという需要が増えているそうですが、管理職が短絡的な手段に走っているとしか思えませんね。

むしろ、こういうときこそ褒め方をもっと勉強べきだ、と私は思いますね。そして、みんなにやる気をもって働いてもらわないといけない。

褒めるのは簡単だとみんな思っている。そこがあさはかなところですね。

褒めるのは、入り口は簡単そうに見えますが、本気で人間を育てようと思ったら、褒める勉強をもっと真剣にしないといけないはずです。

それから、最後の「褒め言葉に酔い続けていると、そのうちしっぺ返しがくる?」という文ですが、たいていの人はそれほどお人好しではないので、大丈夫だと思います。

しかし、そういう人がいないわけではない。内容に関係なく、ただ褒められるだけで嬉しくなってしまうのです。人がよすぎるともいえますね。こういうタイプも少しですがおります。

リーダーに人間を見分ける力があれば、そこはうまく指導できるはずです。

しかし、褒められるとすぐ有頂天になる人たちも自分自身で時々は反省すべきですね。しかし、性格は直らないでしょうねえ。麻生さんみたいな人のことですよ。

リーダーはそういう人たちに高い理想をもたせないといけません。神様と比べれば人間なんてどんなに頑張ってもたいしたことはない。そう思える人間は謙虚です。

リーダーは、そう思えるような高い目標、理想を部下に与えて、それを求めていくような謙虚な人間を育てないといけないと、私は思います。

 

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■リーダーシップ向上に関する参考書籍

佐藤直曉著『リーダー感覚――人を指導する喜び』(鳥影社)

本書はL研リーダースクールの通信講座初等科Ⅰのメインテキストです。初等科Ⅰでは、人の心を動かす訓練としてほめる訓練を実践していただきます。この講座は、受講生に技術的アドバイスを行うとともに、受講生の成長を見守っていく実践型プログラムです。

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