部下と向き合うとき考える5つのスタンス

ドラッカーはリーダーとして要求される要因について、次のように語っています。

「知識労働者は、全体としてみたとき、支配する者である。したがって彼らはリーダーとならなければならない。ということは、知性と価値観と道徳観が要求されるということである(19)」

 価値観について本書では、感受性と言う項目で簡単に扱っております。

 次に道徳観についてですが、これは難しい問題です。私自身、それほど道徳的な人間とも思えませんので、正直何を言えばよいのかよくわかりません。また、道徳教育は思考や言論を抑圧するために乱用されてきたため、世間一般であまり人気がありません。

====

「道徳教育自体が、これまで、あまりにしばしば非道徳的だった」とドラッカーは言っておりますが、まったくそのとおりだと思います。それで、道徳について語るのは、どうしても腰が引けてしまうわけです。

 そこで、道徳の定義から少し離れるかもしれませんが、リーダー感覚を養うにふさわしい「リーダーとして部下に向き合うスタンス」について、私なりの考えを示したいと思います。言い換えれば、これは「リーダーとしての立場を保つ態度」ということになります。

 私が考える「リーダーとしての立場を保つ」条件を列挙してみましょう。

 第一は、支配を求めないことです。
 第二は、常に部下に自発性を促すことです。
 第三は、部下と競争しないことです。
 第四は、部下の成長を願えることです。
 第五は、人の心がわかることです。

佐藤直曉著「リーダー感覚より」

—————————————————————————————-

■リーダーシップ向上に関する参考書籍 

佐藤直曉著『リーダー感覚――人を指導する喜び』(鳥影社)

本書はL研リーダースクールの通信講座初等科Ⅰのメインテキストです。初等科Ⅰでは、人の心を動かす訓練としてほめる訓練を実践していただきます。この講座は、受講生に技術的アドバイスを行うとともに、受講生の成長を見守っていく実践型プログラムです。

立読みはこちらからどうぞ

 

—————————————————————————————

コミュニケーションスキルのなかで、最もベーシックで、応用範囲が広いスキルが、ほめる技術です。

ほめる技術を徹底的に行っていくのが、初等科Ⅰの講座です。L研リーダースクール初等科1

 

事例: ある外資系企業の場合 第2回

前回の第1回はこちら

◆非常手段
こんな状況では、尋常な手段ではすまない。そう考えた若手コンサルタントは、親会社からの依頼状をもっていき、それを見せることにしました。

もっとも、依頼状といっても、それは数行の短いファックスで、幹部たちがどんな考えをもっているか聞いてくれとしか書いてありませんでした。彼らの腹を探れといった露骨な言葉はありませんでした。

コンサルタントとしては、面談相手に会ったとき、その文章のとおりに告げるつもりでしたから、依頼状を見せても別段問題にはならないと判断したようです。

====

疑心暗鬼に陥っているはずの相手に、少しでも緊張を与えないように配慮したつもりだったのでしょう。しかし、この話をあとで彼から聞いたとき、私は率直にいって、ずいぶんひどい手を打ったものだなと思いました。また、効果についてもどうかなと疑いました。

◆営業部長との面談
金曜日の午後、若手コンサルタントは新しい営業部長に会うことになりました。営業部長に会うと、コンサルタントは早速例のファックスを見せ、面談の趣旨を説明しはじめました。

営業部長は声が大きくて威勢のいい人物で、体育会系的なノリの感じがする人だったそうです。

面談が始まると、彼は会社の計画を熱く語りはじめました。入社したばかりであるだけに、やる気のあるところを見せたかったのでしょう。それは理解できると、コンサルタントは好感をもって面談を終えたそうです。

ところが、次の週の月曜日の午後、驚くべきことが起きました。営業部長から突然電話がかかってきたのです。

電話の声は相変わらず威勢がよかったそうです。

「おい、どうだ。元気か」

社外の人間に対して、ちょっと失礼な口の聞き方ですが、自分の父親のように年齢が離れている人物だからと、コンサルタントはそれほど気にはしなかったそうです。

「はい。まあ、なんとか……」

コンサルタントはあいまいに答えました。そして、何の用事だろうと思った次の瞬間、唖然とさせられました。営業部長の声の調子が一変したからです。

「例の件、どうなったですかね……」

気弱な性格丸出しで、つぶやくように、そして哀願するように言うのです。

驚いたのはコンサルタントの方でした。彼は驚きをかろうじて押さえ込み、なんとか取り繕いました。

「先週は有り難うございました。今、報告書をまとめているところです」

コンサルタントは「へんなことは書かないから、安心してくれ」というような嘘や気休めは言わなかったそうです。ただ、「熱意はよく伝えるつもりだ」とは言ったとか。

これは嘘ではないのでしょうが、私からすれば多少はリップ・サービスの感がしないでもありません。

それにしても、イヤな仕事だと、若手コンサルタントはまた思ったそうです。営業部長は、週末を悶々と過ごしていたに違いありません。

—————————————————————————————-

■リーダーシップ向上に関する参考書籍

本稿は、佐藤直曉著『リーダー感覚――人を指導する喜び』(鳥影社)の一部です。

本書はL研リーダースクールの通信講座初等科Ⅰのメインテキストです。初等科Ⅰでは、人の心を動かす訓練としてほめる訓練を実践していただきます。この講座は、受講生に技術的アドバイスを行うとともに、受講生の成長を見守っていく実践型プログラムです。

立読みはこちらからどうぞ

事例: ある外資系企業の場合 第1回

今回からしばらくケースを紹介しますので、分析をしてみてください。

◆三つどもえの構図
ある外資系企業の日本子会社では、社長、営業部長、それに工場長の三人の幹部が、会社のなかで張りあっていました。

この会社の組織は、比較的単純でした。都内のビルには、管理部門を統括する社長と、営業部隊を指揮する営業部長が同居しており、また、少し離れた地方都市に工場があって、そこには工場長が独立国家の王のように君臨していました。

社長は几帳面に仕事をこなすタイプで、人間的にはスムーズでよい人間でした。しかし、強いリーダーシップはなく、営業と生産というふたつの機能を統率できませんでした。彼は、本社と日本間の取り次ぎ役的存在にすぎませんでした。

====

この会社の営業部隊はひ弱で、親会社の期待に沿うような業績をあげることができませんでした。営業部長は、ユーザーとの間で商品トラブルを起こさないよう、常に気を配っていましたが、これは、この会社というよりも、業界全体の問題でした。

この状態を工場長は遠くから冷ややかに見ていました。彼は常に本社のやり方を批判し、社長や営業部長の能力を疑っていました。彼にとって、愛すべきは工場の従業員であり、守るべきは工場の円滑な稼働だけだったのです。

◆幹部の首実検
営業努力の甲斐もなく業績は改善せず、ついに親会社は日本の子会社の社長を解任することにしました。後釜には、外国人社長をあてることになりました。

ちょうどこのころ、営業部長が辞職し、新しい営業部長が就任してきました。そこで、親会社はあるコンサルタント会社に、新しい営業部長と工場長の能力を評価してほしいと依頼しました。近々来日する新しい外人社長が仕事をしやすいようにと考えたのでしょう。

担当を命じられた若手コンサルタントは弱りました。彼はそれまで二人の幹部とほとんど話をしたことがなかったのです。信頼関係のない話し合いはつらいものです。彼らはコンサルタントを親会社のまわしものとして警戒し、疑心暗鬼の目で見るに違いありません。

そんな彼らが、いったいどんな話をするのでしょう。どうせあたりさわりのないことしか言わないに違いありません。「二、三時間話しただけで、何がわかるというのだ」というのが、そのときの彼の率直な感想でした。

悪いことはまだありました。二人とも、コンサルタントとは二十歳ぐらい年齢が離れていました。なんで自分たちがそんな若造に評価されなければいけないのだと、彼らは思うでしょう。彼らの心中が穏やかでないのは、容易に察しがつきました。

—————————————————————————————-

■リーダーシップ向上に関する参考書籍

本稿は、佐藤直曉著『リーダー感覚――人を指導する喜び』(鳥影社)の一部です。

本書はL研リーダースクールの通信講座初等科Ⅰのメインテキストです。初等科Ⅰでは、人の心を動かす訓練としてほめる訓練を実践していただきます。この講座は、受講生に技術的アドバイスを行うとともに、受講生の成長を見守っていく実践型プログラムです。

立読みはこちらからどうぞ

ほめることのできない人

ほめることができない理由はいくつかあります。

そのなかで、最も深刻なのは、リーダーとしての立場を保てないことでしょう。

メンバーの中に、自分より優秀だと思える若い人がいると、嫉妬し、やっつけてやりたいと思う。

そこで、メンバーの悪いところを声高に批判したり、叱ったりする。また、当てこすりをしたりする。

====

こういう人は、リーダーの仕事とは何かをわかっていない。リーダーは部下に仕事をしてもらってはじめて仕事をしたことになる。それがわからないものだから、部下と同列になって、同一目線で競争してしまう。

時々こういう人がおります。要するに、自分に自信がないんです。

こういう人をリーダーにすること自体が間違っています。

心当たりのある人はすぐに心を入れ替えて、拙著『リーダー感覚』を読むことです。

—————————————————————————————-

コミュニケーションスキルのなかで、最もベーシックで、応用範囲が広いスキルが、ほめる技術です。

ほめる技術を徹底的に行っていくのが、初等科Ⅰの講座です。
L研リーダースクール初等科1

—————————————————————————————-

■リーダーシップ向上に関する参考書籍

佐藤直曉著『リーダー感覚――人を指導する喜び』(鳥影社)

本書はL研リーダースクールの通信講座初等科Ⅰのメインテキストです。初等科Ⅰでは、人の心を動かす訓練としてほめる訓練を実践していただきます。この講座は、受講生に技術的アドバイスを行うとともに、受講生の成長を見守っていく実践型プログラムです。

立読みはこちらからどうぞ

リーダーとしての立場を保つ

今日は、コミュニケーション以前の問題です。コミュニケーションというのは、実際にはコミュニケーション以前の問題が多々あると思いますね。今日のテーマはリーダーの心構えに属することです。

自信のないリーダーは、自分の有能さを誇示したい、自分を認めてもらいたいと思い、そのあげく部下と競争します。これはリーダーとして、いちばんしてはいけないことです。

====

リーダーと部下の年齢が近い場合、あるいはリーダーより部下のほうが年齢が上の場合、このようなことがよく起きます。部下も部下で、こんな若いリーダーに負けてたまるかと思いますから、どうしても険悪な関係になりがちです。

実力のないリーダーほど、部下を支配しようとして怒鳴り散らすものです。なかには部下をおだてて動かそうとするリーダーもいますが、このタイプも相手を操作しようとしている点では変わりありません。

実は、私はこの件で大失敗したことがあります

ある人が「戦略案をつくっても、ラインがそれを採用してくれない」と、愚痴をこぼしたのを聞いて、私は「あなたの戦略策定能力に、どこか弱点があるのではないか」と言いました。すると、相手は猛反発しました。

このような反応は、実は私の指摘が図星だったからです。自分の身を守りたいと思うと、人間はそうやって猛反発するものなのです。しかし、相手がそのような反発を示したのは私の失敗でした。欠点を指摘するときは、相手を選んで慎重にしなければいけないといつも言っている私が、失敗してしまったのです。

しかし、私が失敗したのは、相手の心の余裕を見損なったからではありません。実は、相手が生意気で小憎らしいと思ったから、つい嫌味を言ってしまったのです。

度量が小さいリーダーは、部下を認めずに批判したり嫌味を言います。批判や嫌味を言うのは、部下と同列にいて、部下と競争しているのと同じことです。リーダーはそういうことをしないよう、常に自分を戒めていなければなりません。

—————————————————————————————-

■リーダーシップ向上に関する参考書籍

本稿は佐藤直曉著『リーダー感覚――人を指導する喜び』(鳥影社)の一部を抜粋引用しながら、加筆したものです。

本書はL研リーダースクールの通信講座初等科Ⅰのメインテキストです。初等科Ⅰでは、人の心を動かす訓練としてほめる訓練を実践していただきます。この講座は、受講生に技術的アドバイスを行うとともに、受講生の成長を見守っていく実践型プログラムです。

解説・立読みはこちらからどうぞ