事例: ある外資系企業の場合 第1回

今回からしばらくケースを紹介しますので、分析をしてみてください。

◆三つどもえの構図
ある外資系企業の日本子会社では、社長、営業部長、それに工場長の三人の幹部が、会社のなかで張りあっていました。

この会社の組織は、比較的単純でした。都内のビルには、管理部門を統括する社長と、営業部隊を指揮する営業部長が同居しており、また、少し離れた地方都市に工場があって、そこには工場長が独立国家の王のように君臨していました。

社長は几帳面に仕事をこなすタイプで、人間的にはスムーズでよい人間でした。しかし、強いリーダーシップはなく、営業と生産というふたつの機能を統率できませんでした。彼は、本社と日本間の取り次ぎ役的存在にすぎませんでした。

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この会社の営業部隊はひ弱で、親会社の期待に沿うような業績をあげることができませんでした。営業部長は、ユーザーとの間で商品トラブルを起こさないよう、常に気を配っていましたが、これは、この会社というよりも、業界全体の問題でした。

この状態を工場長は遠くから冷ややかに見ていました。彼は常に本社のやり方を批判し、社長や営業部長の能力を疑っていました。彼にとって、愛すべきは工場の従業員であり、守るべきは工場の円滑な稼働だけだったのです。

◆幹部の首実検
営業努力の甲斐もなく業績は改善せず、ついに親会社は日本の子会社の社長を解任することにしました。後釜には、外国人社長をあてることになりました。

ちょうどこのころ、営業部長が辞職し、新しい営業部長が就任してきました。そこで、親会社はあるコンサルタント会社に、新しい営業部長と工場長の能力を評価してほしいと依頼しました。近々来日する新しい外人社長が仕事をしやすいようにと考えたのでしょう。

担当を命じられた若手コンサルタントは弱りました。彼はそれまで二人の幹部とほとんど話をしたことがなかったのです。信頼関係のない話し合いはつらいものです。彼らはコンサルタントを親会社のまわしものとして警戒し、疑心暗鬼の目で見るに違いありません。

そんな彼らが、いったいどんな話をするのでしょう。どうせあたりさわりのないことしか言わないに違いありません。「二、三時間話しただけで、何がわかるというのだ」というのが、そのときの彼の率直な感想でした。

悪いことはまだありました。二人とも、コンサルタントとは二十歳ぐらい年齢が離れていました。なんで自分たちがそんな若造に評価されなければいけないのだと、彼らは思うでしょう。彼らの心中が穏やかでないのは、容易に察しがつきました。

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本稿は、佐藤直曉著『リーダー感覚――人を指導する喜び』(鳥影社)の一部です。

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