呼吸の間隙をつく効果とその勉強法

升田さんという将棋の名人がいました。ユニークな風貌の人で、勝負師らしい感じで、話もおもしろかった。

その升田さんは肺をやられていて体力がないため、軍隊はずいぶんいじめにあったそうです。

銃剣術の訓練のとき、訓練をする前にどんと体当たりを食らわされて体力を消耗させられ、そのあと剣道の試合をするのですから、とても勝てない。

そこで、升田さんは考えた。軍曹が息を吐いたときに打ち込むことにしたというのです。間合いを詰めておいて、向こうが息を吸う、ついで吐こうとする、その瞬間をねらう。

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イチコロだったそうです。それ以後、軍曹のいびりがなくなったそうです。

「これは人間の本能的な生理なんですね。息を吸うときというのは、所作が早いんです。しかし吐くときは、力が弱る。これは活動神経がとっさにゆるむんですな」

これを将棋の盤に向かっているときも使うようにしたそうです。

木村名人との対局のときです。終盤になってお互い時間がなくなって、秒読みになっていた。たぶん一手を一分間とかの短い時間で打たなければいけない状態になっていたのだと思います。

木村さんはタバコを吸いながらやっているから、吐く息、吸う息がよくわかったそうです。そこで、「その呼吸の間をはかって、息を吐こうとした瞬間に、バシッと駒を打つ。すると木村さん、ハッとするわけだ」

これを何度も繰り返していくと、木村名人の思考が狂ってきたそうです。

こういうのを会議や会話で使えれば相当有力でしょう。ただ、吐く瞬間をとらえるのは難しい。今か今かと見ていると、「あ、もう息吐いちゃった」となります。私はうまくできません。

升田さんが夜這いの名人から聞いたところでは、

「寝とる女の呼吸にあわせて、つまり息を吐いたときにふとんのすそを少しずつまくると、相手にきづかれずにやれる。吸うときにやると、これはもう一発で目をさまされるそうです」

あなたも呼吸の間隙をつかむ稽古をしたくなりました? 人間興味のあることをやると、進歩が早い。これが勉強のコツですけどね。