人間の切り分けと暗示

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随分前のことですが、ジョルジュ・シムノンというフランスの推理作家の「メグレ罠を張る」(ハヤカワ文庫)を読みました。

シムノンという作家は、人間を描くのがたいへん上手です。体癖の勉強にもなります。

この本のなかで、メグレ警部が精神病理学者のティソオに、犯人のプロフィールについて意見を求めている会話があります。

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眼に浮かぶように話すには

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目に浮かぶように話すことは、どんな場合でもたいへんな説得力をもちます。

テレビ通販でおなじみのジャパネットたかたの高田社長は、

「その商品を使ってどんなことができるかをテレビで語る」ことが効果があると言っています。

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たとえばテレビを売りこむときには、テレビを見ながら家族で団らんしている姿を語るようにするそうです。

団らんの楽しさや家族の絆をイメージできると、お客さんは喜んで買ってくれるようになるわけですね。

説得や交渉でも同じことで、こちらの提案を実行するとどういう効果があるのか、目に浮かぶように話すことはたいへん大きな効果をもたらします。

ところで、目に浮かぶように話すにはひとつ忘れてはならないことがあります。

それは、相手の経験に基づくストーリーでないといけない、ということです。

こちらの話が相手の脳裏に浮かぶためには、相手が経験したことでないといけないのです。

イメージというのは想像ですから、経験のないことはイメージできません。

たとえば、相手が大工さんなら大工さんのわかる話に置き換える。大工さんにSEの話をしてもたいていの大工さんにはイメージはわきませんね。

サッカーの日本代表監督だったオシムさんは比喩の非常にうまい人でした。

「ライオンに追われたウサギが逃げ出す時に、肉離れをしますか? 要は準備が足らないのです」

こういう比喩をどんどん使えるようになりたいものです。比喩とは、暗示の一種です。拙著『リーダーの暗示学』でも比喩の効果を説明しています。

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■リーダーシップ向上に関する参考書籍 

佐藤直曉著『リーダー感覚――人を指導する喜び』(鳥影社)

本書はL研リーダースクールの通信講座初等科1、初等科2のメインテキストです。初等科1では、人の心を動かす訓練としてほめる訓練を実践していただきます。この講座は、受講生に技術的アドバイスを行うとともに、受講生の成長を見守っていく実践型プログラムです。

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コミュニケーションスキルのなかで、最もベーシックで、応用範囲が広いスキルが、ほめる技術です。

ほめる技術を徹底的に行っていくのが、初等科1の講座です。L研リーダースクール初等科1

 

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コミュニケーションスキルのなかで、高度なスキルを練習する応用講座が、初等科2の講座です。

L研リーダースクール初等科2

 

 

めげている人を励ます方法

私の事務所に「仕事がうまくいかない」と相談にきた女性がおりました。営業企画の責任者だったのですが、営業本隊の方がなかなか意見を聞いてくれないらしくて、自信がなくなったという。

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話を聞くときにはセオリーがあります。最初は、相手がどんなへんなことを言ったとしても反論しないで、黙って聞いてあげること。

そして、相手の言っていること、相手の態度を評価してあげること。

これで、相手がこちらの言うことに耳を貸すようになります。

このラポール関係ができてから、こちらが働きかけることができるようになります。

さて、私は、相手の「ダメだ」という潜在的心理を壊そうとしました。これは暗示のテクニックなのですが、相手が考えていることについての反論をひとつだけ用意するのです。

「君はちっとも言うことを聞いてもらえないと言っていたが、成功した例はないのかい?」

すると、彼女はこう答えました。

「北海道の営業支点からお呼びがかかったことがあります」

それを聞いて私はすかさず言いました。

「それはすごい。東京なら義理で使ってくれることはあるだろう。しかし、はるばる地方からお呼びがかかるということは、よほど頼りにされている証拠だ」

すると、彼女はそんなものかという顔をしましたが、だんだん明るい顔になりました。

これが実は暗示なのです。相手が抱いているイメージの一角を壊すのです。それには、相手が言っていることに対して違う事実を一つだけ提示すればいいのです。

(詳しい心理メカニズムについては、拙著『リーダー感覚』をお読みください)

この場合、北海道の話が本当によい案だったかどうかは、外部の私にはわかりません。それに、この例だけが成功例だったのかもしれません。

しかし、暗示にはそれはどうでもよいことなのです。要は相手が元気になればよい。そうすれば、自分でいろいろ工夫する気力を取り戻すでしょう。

彼女は私のオフィスを去るころには、すごく明るい顔になっていました。

 

コミュニケーションスキルのなかで、最もベーシックで、応用範囲が広いスキルが、ほめる技術です。

ほめる技術を徹底的に行っていくのが、初等科Ⅰの講座です。
L研リーダースクール初等科1

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■リーダーシップ向上に関する参考書籍

佐藤直曉著『リーダー感覚――人を指導する喜び』(鳥影社)

本書はL研リーダースクールの通信講座初等科Ⅰのメインテキストです。初等科Ⅰでは、人の心を動かす訓練としてほめる訓練を実践していただきます。この講座は、受講生に技術的アドバイスを行うとともに、受講生の成長を見守っていく実践型プログラムです。

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リーダーの暗示学

イメージを相手に浮かばせる言葉を『暗示』といいます。これを技術としてまで使えるようにする方法論を述べているのが拙著『リーダーの暗示学』です。

今日は拙著『リーダーの暗示学』と感受性の関係についてお話をいたしましょう。

相手が無意識に浮かべるイメージをコントロールし、部下の否定的なイメージを壊し、積極的な態度に変えることを『リーダーの暗示学』では提唱しております。また、その方法論や事例を載せています。

そのなかで、吉田茂とマッカーサーの対談風景を書いている部分があるので紹介いたしましょう。

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この会談は、昭和20年9月、吉田茂が外務大臣に就任してすぐのことでした。

このとき、日本を統治していた占領軍司令官のマッカーサーと吉田は初めて会うわけです。昭和天皇とマッカーサー司令長官の会見をセットアップする打ち合わせでした。

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会談がはじまると、マッカーサーは執務室の中を行ったり来たりしながら吉田に話す。これはマッカーサーの癖であった。吉田はマッカーサーの言葉を聞き漏らすまいと、マッカーサーの動きに合わせて、体の向きをしょっちゅう変えなければならなかった。

そういうことがしばらく続いているうち、吉田の脳裏に、ふと、檻のなかでうろうろして歩きまわるライオンの姿が浮かんだ。吉田は思わず吹き出してしまった。

マッカーサーは、どうして吉田が笑ったのか、理由をたずねた。吉田は困ったと思ったが、平然と答えた。

「ライオンの檻の中で講義を聴いているみたいだ」

すると、マッカーサーは、吉田の顔を見て、自分もゲラゲラ笑い出した。

マッカーサーの態度について、工藤美代子氏は次のように述べている。

「およそユーモアを解するとも思えないマッカーサーが、吉田の言葉に大笑いをしたのは不思議な感もする。老練な外交官である吉田は、いつのまにか相手の心を取り込むすべを知っていたのかもしれない。また、吉田の英語力が、当時の日本人としてはズバ抜けていたのだとも解釈できる」(工藤美代子『マッカーサー伝説』恒文社21)

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さて、その後マッカーサーと吉田はたいへんよい人間関係を築くことができたようです。吉田はマッカーサーに信頼されたの数少ない日本人の一人でした。私は、その原因が、このときの初対面の会話にあったような気がしています。

吉田茂の言葉は暗示効果をもたらしたと私は考えています。マッカーサーに対して、あるイメージを提供したのです。

この場合、マッカーサーの感受性と吉田茂の言葉がピッタリ合わないと、そういう効果はでません。

では、マッカーサーの感受性はどんなものであったか。

マッカーサーという人はとにかく自己顕示欲が強い人のようでした。自分のことを「マッカーサーはこう言った」とか「マッカーサーはそう思わない」などと日ごろから言うのだそうです。

マッカーサーは自分の演説に酔って、しゃべり出すととならない癖がありました。普段の会話でもそうで、いつの間にか独演会になってしまうのだそうです。

そのわりに社交は好きではないようで、社交はもっぱら婦人に任せていたようです。

あとは、青年時代に胸を病んでいます。

ということで、マッカーサーがどんな感受性かは、私と長いこと付き合ってくださっておられる人ならおわかりでしょう。

マッカーサーは自己陶酔の権化のような人です。そのマッカーサーに向けられた吉田茂の言葉が、マッカーサーの脳裏にどんな化学反応をもたらしたのか……。

詳しいことは拙著をお読みいただくとして、とにかく相手の感受性にぴったりあった言葉が出ると、効果はすごいものがあります。

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■リーダーの暗示学に関する参考書籍

本稿は佐藤直曉著『リーダーの暗示学――部下の心をリードする』(鳥影社)の一部を抜粋引用しながら、加筆したものです。

本書は、リーダーシップを実践的につける訓練法を紹介しています

解説はこちらからどうぞ

聞く耳をもたせるには2

昨日は、聞く耳を持たせるための注意を集める手段にふれましたが、今日は別の手段。ひとつは、相手に断言させる方法。自己暗示に関係するテクニックになります。もうひとつは、連呼。これも暗示学の領域。

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人間は、人の言葉は簡単には潜在意識に入りません。一種の予防的措置なんでしょう。さもないと、危なくてしかたありませんから。

しかし、自分の言葉は、簡単に潜在意識に入る。そのため、否定的な言葉使いはやめよう、などとよく言われます。

わざわざ否定的な観念を自分で注ぐなど、バカみたいですよね。ですから、いつも肯定的な言葉を使いましょう。

それはさておき、自分の言葉は簡単に入るというなら、それを使えばいい。具体的には、スローガンを読ませる。

会社の朝礼で、標語をみなで声をそろえて唱えているところがよくあります。

ダサイやり方に見えますが、これを繰り返していると、結構効果があるのです。

それから、連呼も案外効果がある。いつも同じ事を聞いていると、あほくさくて聞く気がなくなる。ところが、そういうときの方が、言葉が入っている。

それは、警戒心がなくなっているからだと思います。

ですから、コマーシャルでも、いろいろ凝った映像のものより、単純に連呼するものの方が,実は効果があると思います。

代表的な例は、高橋英樹さんがやっている切り餅のコマーシャル。

「正解! えちご製菓」

これの連呼だけなのですが、名前がしっかり脳に染みこんでいく。

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■リーダーの暗示学に関する参考書籍

本稿は佐藤直曉著『リーダーの暗示学――部下の心をリードする』(鳥影社)の一部を抜粋引用しながら、加筆したものです。

本書は、リーダーシップを実践的につける訓練法を紹介しています

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聞く耳をもたせるには

いくらこちらが何か言いたくても、相手の聞く耳がなければ、いわゆる「馬耳東風」ってやつです。

つまり、コミュニケーションにおいては、相手の期待を高め、注意を集めることが大事になります。それには、いくつか方法があります。

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世阿弥の『風姿花伝』には、会場の雰囲気を知ることの重要性が語られています。

「おおぜいの観客が集まる演能では、多くの観客がざわめいていて、会場はなかなか静まらない。そういうとき、演者は満を持して観客の静まるのを待つ。

やがて、能の始まるのを待ちかねて、観客全体の心がひとつにまとまってくる。まだかまだかと楽屋の方に注意が集中するようになる。

その機会をとらえて、すかざず登場して謡いだせば、ただちに会場全体がその場にふさわしい雰囲気をかもしだし、観客の心と演戯が一体化して、しっとりした感じになる。そうなれば、その日の能は必ず成功する」

これを実現するにはどうしたらいいかといえば、たとえば相手の興味がありそうなことを述べて、さわりだけちらっと見せる。

すると、相手はその先が知りたくてたまらなくなる。映画のプロモーションビデオなどはそんな感じですか。

行動を禁じるということも、ありえる手法です。

ロミオとジュリエットのように、つきあうのを禁じられれば禁じられるほど、燃え上がる。もし、彼らがふつうの家族の生まれで、みんなから祝福されていれば、とっくに別れていたかも知れません。

以上のような手段とは正反対の手段があります。それは、相手に断言させる方法。これは自己暗示に関係するテクニックになります。

さらには、これも暗示なのですが、連呼という手段もあります。

ということで、この二つは明日紹介しましょう。

どうです、明日も読みたくなったでしょう?

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■リーダーシップ向上に関する参考書籍

佐藤直曉著『リーダー感覚――人を指導する喜び』(鳥影社)はリーダーシップとコミュニケーション能力を実践的につける訓練法を紹介しています。極めて泥臭いが現実的な方法論です。

本書はL研リーダースクールの通信講座初等科Ⅰのメインテキストです。初等科Ⅰでは、人の心を動かす訓練としてほめる訓練を実践していただきます。この講座は、受講生に技術的アドバイスを行うとともに、受講生の成長を見守っていく実践型プログラムです。

解説・立読みはこちらからどうぞ

時間を区切る暗示

「あとこれだけの時間頑張ればなんとかなる」と言われると、「そうか、それくらいなら、やってみるか」と思うわけです。

これは拙著『リーダーの暗示学』に示した、「時間を限定する暗示」というわけ。

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私が留学する前のことですが、ちゃんとついていけるかどうか、すごく不安になって先輩に聞いたのです。すると、その人はこう言いました。

「最初の一学期、3ヶ月だけ耐えればいいんだ」

たしかに、最初の学期とそれ以降の学期では授業科目は違うけれども、同じ学生が受けているわけですから、一学期目さえ無事に通過できれば、あとは同じよういくはずです。そう思えたら、私はすごく気が楽になりました。

その後、日本に帰ってからのことですが、私の事務所に同じような悩みを抱えた女性がやってきました。そこで、私も先輩に言われたのと同じことを言ってあげました。

すると、彼女は「なるほど」といった顔で、非常に元気になりました。

こういうことがおもしろくて、『リーダーの暗示学』をまとめたのです。リーダーの暗示といっても、そんなにとんでもないことではないんです。少なくとも私のいう暗示はですね。

コミュニケーションスキルの中で、暗示技術というものもぜひ勉強して下さい。

世間では暗示技術というと自己暗示をさすことが多いですが、私のはリーダーが他人にかける暗示。

原理を知れば、それほど難しくはない(ものも多々あります)。みんな、暗示と気がつかずに、結構使っていたりしますよ。

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■リーダーの暗示学に関する参考書籍

本稿は佐藤直曉著『リーダーの暗示学――部下の心をリードする』(鳥影社)の一部を抜粋引用しながら、加筆したものです。

本書は、リーダーシップを実践的につける訓練法を紹介しています

解説はこちらからどうぞ

 

暗示技術はほめる技術としても使える

「すごい、すごい」「うまいなあ」とほめるばかりが能じゃない。こんなのはダサイ。相手も直接的なほめ方ではかえって警戒するかもしれない。

以下は、『リーダー感覚』ではなく、拙著『リーダーの暗示学』(116-123頁の抜粋)の事例です。

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マッカーサーと吉田の最初の会談

昭和二十年九月二〇日――吉田茂が初めてマッカーサーと会った日である。当時、吉田は外務大臣に就任したばかりだった。

吉田は、昭和天皇とマッカーサーの会見を交渉する目的で、マッカーサーを訪れた。会談が始まると、マッカーサーは執務室の中を行ったり来たりしながら吉田に話をした。

これはマッカーサーの癖だったのである。吉田はマッカーサーの話を聞き漏らすまいと、マッカーサーの動きに合わせて、体の向きをしょっちゅう変えなければならなかった。

しばらくして、吉田は突然吹き出した。マッカーサーを見ていたら、檻の中でうろうろ動きまわるライオンの姿が浮かんだのである。すると、マッカーサーはどうして笑ったのかと尋ねた。

吉田は困ったと思ったが、平然と答えた。
「ライオンの檻の中で講義を聴いているみたいだ」

すると、マッカーサーは、吉田の顔を見て、自分もゲラゲラ笑いだした。

マッカーサーの態度について、工藤美代子は、次のように解説している。

「およそユーモアを解するとも思えないマッカーサーが、吉田の言葉に大笑いをしたのは不思議な感じもする。老練な外交官である吉田は、いつの間にか相手の心を取り込む術(すべ)を知っていたのかもしれない。また、吉田の英語力が、当時の日本人としてはズバ抜けていたのだとも解釈できる(9)」

◆[設問]

なぜマッカーサーが笑いだしたか、その理由を読者に考えていただこう。ヒントをひとつ。マッカーサーが、吉田の言葉から何を空想したかを考えることである。

ちなみに、この会談以降、吉田とマッカーサーの間には、他の日本人との間には見られない良好な関係が続くのだが、すべてはこの時点で決まったと言っても過言ではないように思われる。

答えは『リーダーの暗示学』にありますよ。

コミュニケーションにおける暗示効果

暗示というのは、相手にこちらが意図する空想を生じさせる技術なのです。そういう空想がわくと、それに伴う行動が出てくるからです。

つまり、こちらが期待している行動を、相手に空想を通してとらすことなのです。

今回の3党合意の場面では、自民党がその手を使いました。

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以下は民自党首会談:「密室の30分」自民が演出- 毎日jp(毎日新聞)の引用です。

「野田佳彦首相と自民党の谷垣禎一総裁が8日夜、『近いうち』の衆院解散・総選挙の実施で合意した党首会談で、2人だけで約30分間会談したのは、自民党が仕掛け公明党が協力したものだったことが9日、関係者の話で分かった。

首相と谷垣氏の会談は国会内で約40分間行われ冒頭は民主党の樽床伸二幹事長代行と自民党の石原伸晃幹事長が同席。石原氏は開始から約8分たったところで『樽床さん、出ましょう』と声を掛け、『えっ』と戸惑う樽床氏を連れ出し、『密室の30分』を作り出した。

谷垣氏は党首会談を受ける際、2人だけの会談を希望したが、早期解散に否定的な民主党執行部から『お目付け役』の樽床氏が同席することになったため、石原氏が谷垣氏と示し合わせた。公明党の山口那津男代表も2人の会談後に加わることにして協力した。

首相と谷垣氏が解散時期を巡り『密約』を交わしたか否かは不明だが、自民党幹部は『2人きりにすれば、発言は表に出ず、何か確約したのではないかと疑いを呼べる』と狙いを語った」

2人だけの時間をつくることで、まわりの人間にあらぬ空想を生じせしめた、狡猾な作戦といえます。

もっとも、この記事からは、2人だけの対談は自民が仕掛けたものであり、野田首相が積極的に解散を明示する意図はなかったとも読めます。

裏でこの記事を書かせたのが民主側であったとすれば、「空白の時間は、実はたいした意味はなかった」ということを暗示したかったとも考えられます。

ですから、新聞の解説はその記事が書かれた背景を推測しないと危なくてしかたありません。あまり、新聞解説をまともに信用しないことです。

レトリックとコミュニケーション

コミュニケーション力をつけたいと思うなら、多少なりとも「言葉」の研究はしないといけないでしょうね。

言語学者のようなわけにはいきませんが、私も素人なりに勉強しています。

レトリックというのも、その過程で学んだことです。これは暗示学とも縁が深い。というのも、レトリックには暗喩とか比喩という、非常にイメージを膨らます手法があって、これが非常に暗示的効果をもたらすのです。

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以下は拙著『リーダーの暗示学』に書いたことです。

レトリック研究の第一人者である中村明の『名文作法』(PHPエディターズ・グループ)に、「表現の深さ」をどう感じるかというアンケート調査の結果が載っていました。

たとえば、「生まれてから死ぬまで」という言い方と、「ゆりかごから墓場まで」という言い方を比べて、どちらが表現に深みを感じるかと尋ねたところ、後者の方が圧倒的に支持されました。

私の考えでは、これは空想と大いに関係があります。「ゆりかごから墓場まで」は直接的な言い方ではありません。そのため、それはどういうことかなのだろうという空想――あるいは推理と読んだ方がいいかもしれません――が働くのではないでしょうか。

ほかにも、おもしろいと思った比較のペアを『名文作法』からいくつか紹介しましょう。

「今年中に結婚したいものです」
「来年の年賀状は連名で出したいものです」

「オリンピックの代表に選ばれた」
「ロンドン行きの切符を手に入れた」

「お宅には金めの物がありませんね」
「お宅は泥棒にねらわれる心配がなくてうらやましいですね」

これらは、いずれも後者の方が、表現が深いと評価されました。たしかにそうでしょう。これらのケースも、後者は間接的であり、聞き手のイメージを誘っています。

もっとも、おもしろい比喩はみんなが使い出すので、だんだん陳腐化していき、あまり新鮮でなくなることもしばしばです。ステレオタイプになってしまうんですね。上のオリンピックの例などはそうかもしれません。

しかし、あまりにも斬新な比喩はどうかということもあります。

たとえば、川端康成の『雪国』では、駒子の唇を「蛭(ヒル)のように美しい」と書いています。オエ-、気味悪り~!

イメージを浮かばせるということが、ある意味コミュニケーションの目的というか本質なのかもしれないと思うことがあります。

みなさんも、相手の脳裏にイメージが浮かぶような言葉を使えるように研究していきましょう。