コミュニケーションスキル以前

小倉久寛さんがまだ売れていないころ、コマーシャルの仕事が入りました。

それは慣れないサラリーマンの役。

(実際、若い俳優のなかには、背広が全然似合わない人がいますね。ふだん着慣れてないからなんでしょうね)

いざ撮影が始まったのに、監督からなかなかOKが出ない。そのうち「ちょっと休憩しよう」という声が監督から出たそうです。

その休憩中に小倉さんは監督に呼ばれて「君、今日はもういいよ」と言われる。

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どうなるんだろうと思って、撮影再開後の様子を見ていたら、自分の役をなんと自分のマネジャーがやっていたんだそうです。

このときは、ものすごいショックを受けたそうです。それはそうでしょう。役者じゃない人が自分の役をやってるんですから。

それ以来もう自信喪失。毎日が暗闇。それで、劇団のトップの三宅裕司さんにわびを入れにいったそうです。すると、こう言われた。

「まだ小さいうちに失敗してよかった。大きくなってこんな失敗をしたらたいへんだった」

これを聞いて、小倉さんはすごく気が楽になったそうです。そして、このときの三宅さんの言葉を一生忘れないと言っています。

この例は、「今の小さい自分、小さい劇団」という世界に対して、「ビッグになった大きな世界」を提示して、失敗を相対的に小さく見せているわけです。

暗示の技術論としてもたいへんおもしろいのですが、それ以上に三宅さんのリーダーとしての資質を認めるべきでしょうね。

もし三宅さんがこのとき怒鳴ったら、小倉さんは終っていたかもしれませんね。

失敗したとわかっている人を怒るのは、たいがいが自分の鬱憤晴らしにすぎませんね。

パーソナリティにかかわらずコミュニケーションはスムーズにできる

今日は、新任リーダーの悩みを取り上げてみました。

職場は、人材派遣の入れ代わりの激しさで、コミュニケーションの不足から団結できていない状況です。

そのなかで、リーダーシップスタイルについて、どうあるべきか悩んでいるようです。

仕事上でミスは決して許されないため高圧的な態度が適切なのか、それとも冗談交じりを含めた態度が適切なのか?

別のリーダーは冗談交じりでうまくやっているそうですが、この人はミスは絶対に許されない仕事柄、作業員の意識改革が必要であり、冗談話しはほとんどしないそうです。

情報が少ないので的確なことが言えるとは思えませんが、少々考えてみましょう。

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まず、リーダーシップスタイルですね。

これは、仕事の種類によって決まるケースと、リーダーのパーソナリティによって決まるケースがあります。

リーダーシップスタイルには、両極端があり、実際にはその中間が多いでしょう。

ひとつの極は、現場に一切任せてしまうこと。自由放任とでもいいますか

もう一極は、全部リーダーが決めてしまう独裁的スタイル。

行われているのは、多くの場合、その中間型でしょう。

仕事のタイプによってこれは変わります。

戦略的な問題は独裁型に近くないと難しいと思います。

新規市場への参入、あるいは撤退、合併――こういった類の問題を大勢で自由奔放に論議してもまとまりませんね。

一方、現場の仕事については、できるだけ現場に裁量を与えることが望ましい。

といっても、やり方は考えないといけません。なんでも無方針で好きにやらせるのではなく、品質管理はしないといけません。

そのために、仕事の目標、権限、責任などを明確にすることが必要です。このあたりは、コミュニケーションというよりマネジメントの問題です。

次は、リーダーのパーソナリティの問題。

信長に部下には自由裁量でやらせろ、などとレコメンドしても聞く耳をもたないでしょう。基本的に全部自分で決めると思っているわけですから。

一方、日露戦争で陸軍総司令官の大山巌などは、「児玉さんにお任せします」という感じでした。責任は自分がとるから、実務は一切部下に任せるといった感じ。オーナー企業で仕事は番頭さんにすべてお任せというのも、こんな感じでしょうか。

さて、上の問題でお悩みの人の場合、仕事の種類は現場中心で行う方がよさそうです。ただし、品質管理は相当細かくやらないといけないようです。

それをどのように行うのか。そこが、パーソナリティで決まるわけです。

この人は几帳面な人のようなので、細かく指摘しそうな感じです。

しかし、このパーソナリティはそう簡単には変えられないでしょう。冗談を言って、職場を和ませるような芸当も身に付けるのはそう簡単ではないでしょう。

そこで、私は自分のパーソナリティは活かしつつ、ほめる技術を学べばよいと思うわけです。

これによって、冗談を言わなくても共感は得られます。

こういう人は、まずL研リーダースクールの初等人間行動学科で学ぶとよいでしょう。

リーダーになって最も苦労する人とは?

リーダーになって苦労している人というのは、部下に対して関心をもてない人なのではないでしょうか。

「いや、俺は部下に関心をもって一生懸命意見を聞いている」と言う人もいますが、よく調べると、意見を聞くのが1で、それについて自分の意見を押し付けるのが10だったりします。そういうケースが多いような気がします。

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たとえば営業課長になったら、自分でビッグな顧客を営業することももちろんありますが、同時に部下の営業マンを育てていかなければなりません。

営業技術を教えなければならないし、そもそもそれが受け入れられる信頼関係を営業マンとの間で築かなければならない。自信を失った部下は慰めなければならない。あるいは、天狗になっている営業マンは叱ることが必要かもしれません。

そういうとき邪魔なのが、「自分を示したい」とか「認めてもらいたい」という欲求です。

前者は、自分はえらいぞと、威張って見せたい欲求です。また、後者は、人に頼りたい、かばってほしいという欲求です。これを「注視欲求」と私は呼ぶことがあります。これらは非常に強い人間の欲求です。これが邪魔するのです。

リーダーとは、自分の欲求を抑えて、相手の欲求を認めてあげるのが仕事のようなものなのです。自分の欲求にふりまわされていては、仕事ができません。そういうふうに発想を転換しなければならないのに、案外それができない人が多いのかもしれません。

リーダー感覚の画像『リーダー感覚』

リーダーのコミュニケーション能力とは?

今日はリーダーのコミュニケーション能力とはなんぞや、ということに触れます。

コミュニケーションとは立場によっていろいろな意味があってわかりにくいと思いますね。

企業が学生に求める資質として「コミュニケーション能力」をあげていますが、どうでしょうかねえ。

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先日も経団連の調査でトップに上がっていました。

けれども、この調査どんな意味があるのか、私にはよくわかりません。

なぜならば、コミュニケーション能力とは何を指すかがはっきりしない質問調査だからです。

あるサイトでは、3つくらいの意味があるというのです。

①ホウレンソウ上手
どちらかというと古い会社に多い。これを重視する企業では、組織の忠実な歯車としての役割が期待されているはず。

②調整能力
根回しとか人付き合いとか、そういった日本的な言葉で語られるものだ。

③表現力

1は企業に入ってから教えればいいことだろうし、2は仕事を通じて学ぶことでしょう。

ならば、学生には3の表現力を求めているのでしょうか?

学生の言葉と社会人の言葉は違います。

ということで、私はどれもあまり意味がないような気がします。社会に出てから勉強すれば十分じゃないかと。

私は人事担当者ではないので、あまりわからないことですけどねえ。

いまは私の就職時代と比べて、難しい時代なんでしょうかね。

さて、このブログで扱うリーダーのコミュニケーション能力とは、上のどれでもありません。

リーダーとして部下を成長させ、部下のやる気を高め、チームの運営をスムーズに行うためのスキルを扱います。

より具体的に言えば、モチベーションアップの会話、説得の技術、認め方の技術、しかり方の技術、暗示の技術などといったものです。

言い替えると、リーダーシップを発揮させるため道具の提供ということでしょう。

ここでいうリーダーシップとは、リーダーの考えを上手に部下に伝えることで、部下が気持ちよくやる気を持って仕事ができるようにする能力ということです。

リーダーシップの基本はコミュニケーション能力

明治大学文学部教授の斎藤孝さんが「一般的に上司の言動に対する部下の態度があまりにも冷たいのではないか」と書いているのを読んだことがあります。

たとえば、会議で上司が一生懸命話をしているのに、ただうつむいていたり、何かの資料を読んでいたり、隣の人と別件の話をしたりしている人をよく見かける、というのです。

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こうなるのも、リーダーの日ごろの行いが悪いから、と言えるのかもしれません。あるいは、その会議の意味がわからないとか、部下のリーダーに対する不満の表現方法のひとつなのかもしれません。

そういう寂しいリーダーの姿を第三者に見せないためにも、チーム運営のリーダーシップをきちんとマスターしないといけませんね。

しかし、チームの運営といっても、その前に部下一人一人との人間関係を良好にたもっていないといけません。

いくらチーム運営のマネジメントを学んでも、そこのところができていなければ、宝の持ち腐れです。

リーダーシップの原点は、あくまで「自分の考えを部下にうまく伝えながら、気持ちよく部下が動けるようにする能力」なのですから。

基本に戻るということ。

そのあたりは、L研リーダースクールの初等人間行動学科の内容をお読みいただければ、少しは理解いただけるかもしれません。

コミュニケーションスキル(叱る技術)以前のリーダーの態度を考える

リーダーが用いるコミュニケーションスキル――ほめ方、叱り方などですが、これには定石があります。

「ほめるときは100パーセント、ピタッと当ててほめる」、「叱るときは70パーセント程度に当てるだけにする」というのが定石なのです。

ほめるときは、相手がほめてほしいと思っていることをピタッと当てなければ、相手に感動を与えられません。これができるためには、相手の感受性を理解していると効果があります。

一方、叱るときは、急所を少しはずして叱るべきです。もろに急所を突かれると、相手は立ち上がれなくなるか、さもなければ逃亡してしまいます。

実は、私はこの件で大失敗したことがあります。以下は『リーダー感覚』に書いた私の失敗例です。

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ある人が「戦略案をつくっても、ラインがそれを採用してくれない」と、愚痴をこぼしたのを聞いて、私は「あなたの戦略策定能力に、どこか弱点があるのではないか」と言いました。

すると、相手は猛反発しました。

このような反応は、実は私の指摘が図星だったからです。自分の身を守りたいと思うと、人間はそうやって猛反発するものなのです。しかし、相手がそのような反発を示したのは私の失敗でした。

欠点を指摘するときは、相手を選んで慎重にしなければいけないといつも言っている私が、失敗してしまったのです。

しかし、私が失敗したのは、相手の心の余裕を見損なったからではありません。実は、相手が生意気で小憎らしいと思ったから、つい嫌味を言ってしまったのです。

度量が小さいリーダーは、部下を認めずに批判したり嫌味を言います。批判や嫌味を言うのは、部下と同列にいて、部下と競争しているのと同じことです。リーダーはそういうことをしないよう、常に自分を戒めていなければなりません。