コミュニケーションは相手の価値観を認めることから

あなたが今、四人でボートに乗っているとします。

あなた以外には、母親、妻(あるいは夫)、幼い子供です。

このボートが沈みはじめました。

あなたはなんとか泳げますが、あなたの能力ではあと一人しか助けられません。

誰を助けますか?

こういう究極の質問をすると、当然答えは三通りでてきます。

母親と答えるのは、東南アジアの国のいくつかと中近東の国に多いそうです。

妻は後でまた見つけられる。子供は後でつくれる。しかし、母親はつくれない、ということのようです。

妻と答えるのは、西洋に比較的多いそうです。それ以後の人生において、最も大事なパートナーだからという理由だそうです。

子供と答えるのは、いちばん期待寿命が長いから、ということでしょうか。

もちろん、どの答えも一理ある。合理的です。意見が異なるのは、その合理性が他の人と一致しないだけだからです。

その合理性とは、結局のところ価値観といえます。

何を大事にしているか、ということです。

ついでに、もうひとつ。いつもお話ししている例をまた出しましょう(拙著『リーダーの人間行動学』からの引用)。

船が座礁してしまい、乗客は救命ボートに乗り移ろうとしました。ところが、人数が多すぎて、何人かは岸まで泳いでいかなければなりません。どうやって説得するか。

イギリス人には
「ジェントルマンらしく行動してくれ」

ドイツ人には
「船長の命令である」

イタリア人には
「君は飛び込むな」

アメリカ人には
「保険に入っているから大丈夫」

日本人には
「みなさん、泳いでいますよ」

傑作なジョークですよね。いつも笑ってしまいます。

しかし、これはなかなか含蓄のあるジョークでもありますよ。

つまり、人間は何によって動かされるかということなんです。

繰り返しになりますが、人間はすべて合理的に行動しているといえます。

ただ、その合理性が他の人と一致しないだけなのだと思います。

その合理性とは、結局のところ価値観であり、感受性です。

イギリス人は社会的名声をとても大事にしている。

アメリカ人は経済的利益をとても重視しています。

日本人は、組織の中での調和を重視しています。

これはそれぞれの国の典型的な価値観を表現していますが、人間の価値観でもあります。

日本人の中にも、イギリス人的価値観やアメリカ人的価値観をもっている人が当然おります。

ですから、説得のためにコミュニケーションを行おうとするときは、相手の感受性をしっかり認識しないと、まるで外国語で話しかけるようなことになりますね。

——————————————-
■感受性、人間分析に関する参考書籍
『リーダーの人間行動学――人間を見る力を鍛える』(鳥影社)は、体癖論の感受性理論をベースに、歴史上の人間(探険家スコット、乃木希典、大村益次郎、ショパンとサンド、空海と最澄)の行動分析を通じて、感受性の解説を行っております。営業折衝や対人折衝にとても役立ちます。一部立読みが可能です。こちらからどうぞ

感受性の解説